83円を引き出し残高はゼロに…生活保護を2度断られた男は、そしてクリニックに火を放った

昨年12月に大阪市の心療内科クリニックで起きた放火事件では26人が犠牲になった。
ノンフィクション作家の吉川ばんびさんは「犯人男性は事件を起こすまで生活に困窮しており、
生活保護を2度申請するも、いずれも受給できなかった。
事件の背景には、生活困窮者の社会的孤立という問題がある」という――。

「困っている割にはずいぶん小ぎれいな服を着てるんですね」
これまでに私が関わった生活困窮者のほとんどが、過去に役所の窓口以外にも、就労移行支援の場、精神科や心療内科、
生活困窮者支援などを行うNPO団体など、本来もっとも「公的福祉につなげやすい場」であるはずの組織や
機関において差別的な扱いを受けたり、からかわれたり否定されたりした経験を持っていた。

発達障害で就労移行支援を受けていた男性は、職員から「困っている割にはずいぶん小ぎれいな服を着てるんですね」といった侮辱を受け、
二度とその場に行けなくなってしまったという。

精神疾患で入院していた過去がある女性は、
就職するも再び症状が悪化してまともに働けなくなり、当時、睡眠導入剤を処方してもらうために通っていた心療内科で経緯を説明し、
障害年金の申請をしたいと相談をしたところ、医師から大きなため息をつかれた。

「あなたみたいな人、よくいるんだよね。眠れないくらいじゃ要件に該当しないの!」と嘲笑されたため、
「過去に入院していた大学病院で診断を受けているが、それでも該当しないのか」と聞くと、
今度は「それはうちでは診断してないから、その病院で聞いてください。以上!」と言われ、それ以上は一切取り合ってもらえなかった。

他にも枚挙にいとまがないが、私の元に相談がきたとき、彼ら彼女らはかなり追い詰められている様子であり、
「死ぬしかないのでしょうか」と口にする人も少なくなかった。
https://president.jp/articles/-/55544