楳図かずおさんが27年ぶりの新作『ZOKU-SHINGO』に込めた思い 今の漫画界を「退化」と苦言も
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──新作には「手描き」のこだわりを感じますが、現在の漫画界は「デジタル作画」が主流になっています。

それ! 僕が漫画を離れた原因のひとつです。昔、ペン先につけていた開明墨汁を買おうにも、もう店に置いてないんですよ。店員さんに薦められたインクを使って描くと、紙が剥がれちゃう。僕はペンタッチの強弱で立体感をつけ、肉質感を出すやり方でしたけど、今の漫画はペンタッチが一本調子で生命感が全くない。やっぱり漫画は手描きの温かみ、血が通っている作品になっていないと。今の漫画界は芸術性よりも商業主義に傾いている気がします。これも「退化」の問題で、あまりにも機械に頼り過ぎると、機械がなくなった瞬間に漫画が描けなくなってしまいます。

──あまり好ましい現状ではなさそうですね。

今の漫画はアニメの台本になっちゃっていて、漫画自体よりもアニメが評価されているだけです。子供が読む漫画もバトルものばかりで、物語の世界が狭すぎると思う。戦いとは結局、行動だけを描くから、子供にとって少し引っかかる深い考えや思想的なモノがなくなってきています。そんなことを思いつつ、新作は子供向けにも描いたつもりです。今の大美術展を今度はぜひ、子供客限定で開きたい。

──漫画の創作から離れていても、漫画への情熱を感じます。

漫画が好きですからね。漫画が成り立つ国はとても良い国なんです。漫画作品の多くは普遍的な正義感などが盛り込まれていますが、その価値を共有できない国では話が通じません。政治や宗教などひとつのストーリーに支配されていれば、漫画のストーリーが入り込む余地はない。だから、僕は漫画を大事にしたいし、皆さんにも「漫画のある国は素晴らしい」と思って、大切にしてもらえればうれしいです。