居所通報

「まさか自分の元に来るとは思っていなかった」。
ITプログラマーのロマさん(35)は3月中旬、軍への招集令状を受け取った。妻イリーナさん(32)と生後3か月の息子の安全を考え、侵攻が始まる直前の2月中旬、
首都キエフから西部リビウ近郊に移っていた。仮住まいのアパートに徴兵事務所の職員が訪れ、令状を直接手渡されたという。

軍への入隊は頭になかった。
「たった2週間の訓練で戦闘術を学べるとは思えない。自分は実際の戦場では役に立たないだろう。サイバー攻撃などの情報戦で戦いたいと考えていた」と戸惑う。

イリーナさんは「自分は国を愛しているし、国を支えたいと思っている」と語るが、招集により夫がそばにいなくなると思うと、逃げ出したいという気持ちが芽生えるようになった。

総動員令は、侵攻開始当日の2月24日に発令された。徴兵の対象は18〜60歳の男性で、出国が禁じられた。
侵攻後、ウクライナ国内では愛国主義的な風潮の高まりもあって入隊を志願する人も多く、招集される事例はまだ少ない。
ただ、国外へ出る人の経由地となっているリビウなどの西部では、キエフや東部からの避難者を「非国民」だと敵視する住民も一部におり、避難者の居場所を徴兵事務所に通報するケースもあるという。

女装で脱出図る

避難先にも招集令状「まさか自分の元に」…ウクライナは総動員体制、家族離散も

ロシア軍のウクライナ侵攻を受け、バスターミナルでポーランドに避難する妻と子どもたちを抱きしめる男性(2月25日、ウクライナ西部リビウで)=三浦邦彦撮影

総動員令は家族の離散を強いている。
ポーランド国境に向かう列車が発着するリビウ駅では、妻や子供、恋人と、見送る男性の別れの光景を目にすることが日常的になった。
ポーランド側の避難所には、両手で子供の手を引き、重い荷物を背負ってたどり着く女性の姿が数多く見られる。

国境付近では、国外脱出を図る男性の拘束が相次ぐ。国境警備隊は、女装したり、荷物に身を潜めたりして国境を越えようとして拘束された男性の事例を、見せしめのようにホームページに掲載。
3人以上の子供や障害者の扶養者など、特例で出国が認められている男性についても、証明書の偽造などがないか目を光らせる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0f31d4e394b464cd5c8076014ee9e2d60cce6cdd