令和4年の公示地価で全国の商業地下落率トップ10に、昨年に続いて大阪市中心部の繁華街「ミナミ」から8地点が入った。
三大都市圏の商業地のうち東京圏が前年比0・7%、名古屋圏が1・7%とそれぞれ上昇に転じた一方、
大阪圏のみが横ばいで「一人負け」に。

近年の地価急上昇はインバウンド(訪日外国人客)の急増によるところが大きかったが、新型コロナウイルス禍で蒸発し、他都市よりも回復の遅れが目立っている。

2年連続で全国最大の下落率となったのが、グリコの看板でおなじみの、ミナミに位置する道頓堀の一角だ。
閉店した老舗フグ料理店「づぼらや」があったビルで、15・5%の下落だった。昨年の28%に比べれば下落幅は小さくなった。
今もづぼらやの看板は残ったままで、新たなテナントが入って営業している形跡はない。

周辺は春休みシーズンとあって若者中心に人出があるものの、かつてのように外国人観光客でごった返す様子はない。
付近の飲食店関係者は「インバウンドに頼っていたすし店、和食店はしんどい状態が続いている。閉店した後もほとんどのテナントは空いたままだ」と嘆いた。

ほかの下落率の上位地点も外国人に人気のあった「黒門市場」や心斎橋の商店街の中などで、ドラッグストアなどが軒を連ねていたエリアだ。

コロナ前までは多くの外国人客を見込んで、高額の家賃でも次々に大手チェーンが進出し、地価の上昇要因となった。
不動産サービス大手、ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)関西支社の山口武リサーチディレクターは、足元で地価が下落しているのは「インバウンド消失で、
見合わなくなった家賃負担を嫌って(チェーンなどの)退去が続いているため」とみる。

また、不動産経済研究所の笹原雪恵大阪事務所長は「同じ観光地でも国内客からの人気がある京都は、ミナミに比べて落ち込みが小さい」と話す。
大阪市内でも「キタ」と呼ばれる梅田エリアは再開発計画もあってオフィス需要が堅調なため、商業地の地価の落ち込みはミナミより小さいという。
笹原氏は「大阪の中でもキタへの需要集中が進んでおり、ミナミとの差が開いている」とした。

JLLの山口氏は、一部の投資家の間で、コロナ後を見据えた不動産取引の動きがあることも指摘する。
ただ、ウクライナ情勢の緊迫化で、さらに景況感が悪化すれば投資意欲が冷え込みかねない。
インバウンド頼みで地力に乏しいミナミの低迷が、さらに長期化する可能性がある

https://www.iza.ne.jp/article/20220322-3AEINSFQTBNYVBNCGNMJGYVFJU/

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