安保理、ウクライナ人道危機巡る露の決議案を否決 中国は賛成

 ウクライナ危機をめぐり、国連安全保障理事会(15カ国)は23日、ロシアが独自に提出した人道状況に関する決議案を採決にかけたが、賛成はロシアと中国だけで否決された。米国など残り13カ国は棄権した。安保理決議の採択には、9カ国以上の賛成と常任理事国が拒否権を行使しないことが条件になる。

 ロシア案は人道危機に対するロシアの責任には触れておらず、欧米などは当初から賛成しない考えを示していた。英国のウッドワード国連大使は「ロシアの侵攻が人道的危機を引き起こしていることに疑いの余地はない。人道的惨事の唯一の原因はロシアだと認めない決議には、安保理でも国連総会でも賛成しない」と批判した。

 米国など13カ国は、人道問題をめぐる決議案に「反対した」と宣伝に使われるのを避けるため、一致して棄権したとみられる。米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は「拒否権を使うのに値しない決議案だ」と述べた。

 中国はロシアによるウクライナ侵攻が起きて以降初めて、決議案の採決で棄権に回らずロシアと同調した。張軍国連大使は「中国は関係国に、人道問題に焦点を当て、政治的な相違を越えるよう呼びかけてきた」などと強調し、「欧米は政治的だ」と反発するロシアに配慮する姿勢を見せた。

 人道危機をめぐっては、フランスとメキシコが「敵対行為の即時停止」などを盛り込み、人道支援を訴える決議案を作成。安保理での採択を調整していたが、ロシアの拒否権行使を想定し、193カ国による国連総会の緊急特別会合での採択を目指している。決議案は24日に採決にかけられる見通し。【ニューヨーク隅俊之】

https://mainichi.jp/articles/20220324/k00/00m/030/084000c