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セレン化スズ多結晶体の熱電変換性能30倍、東大が成功した意義

東京工業大学のホ・シンイ大学院生と片瀬貴義准教授、細野秀雄栄誉教授らは、セレン化スズ(SnSe)の多結晶体にテルルを添加することで、熱電変換性能を約30倍に高めることに成功した。添加して焼成するだけの簡便なプロセスで、小さな温度差から大きな電気出力を得るための電気伝導度を10倍に高め、熱の逃がしやすさにつながる熱伝導率を3分の1に低減した。廃熱利用で広く求められる300度C以下の低温熱を効率良く電気に変える熱電変換材料開発の指針となる。

研究グループは、セレンと同価数のテルルイオンをSnSe多結晶体に添加し、熱処理によりこれらが均一に混じり合った固溶体を合成。高い電気伝導度と低い熱伝導率を両立し、300度Cにおいて変換効率を示す無次元性能指数ZTを0・62まで高められた。

量子計算などによりその仕組みを解明した。結晶中のセレンがサイズの大きなテルルで置換され、結合力の弱いスズとテルルの結合が形成される。結合が切れてスズが放出されると、電気伝導を担う正孔が生成され、電気伝導度が高まる。また、この弱い結合が熱の伝搬を阻害するため、熱伝導率が下がる。

SnSeは高性能な熱電材料候補として、異なる価数を持つイオン添加による電気伝導度向上などが検討されているが、複雑な工程が必要だった。