北方領土に住む旧ソ連系住民でウクライナ人が多いと、これまでもさまざまな形で報道されている。たとえば、2015年8月18日の北海道新聞ニュース「国後島でウクライナ出身者ら緊急集会<北方四島映像だより>」では、島民の3人に1人がウクライナ出身者だとしている。

また、北海道大学のスラブ研究所の「21世紀COEプログラム研究報告集 / 21st Century COE Program Occasional Papers No.15」での岩下明裕(北海道大学スラブ研究センター)、本田良一(北海道新聞小樽支社)による「日ロ関係の新しいアプローチを求めて」では、南クリール、クリール両地区執行委員会幹部から聞き取り(1991年前半の取材)として「91年夏の時点で、北方領土の住民はウクライナ人4割、ロシア人3割、残りはその他という割合だった」としている。(P.112)としている。

どうしてそうなったかは、「第二次大戦で主戦場となったウクライナは疲弊していた。北方領土へ移り住んだウクライナ人が多かった事実は、当時、ウクライナが貧しかったということを反映しているのだろう」としているが、これは著者の当てずっぽうだ。

スターリンによってウクライナ人は強制連行ないし集団移住させられたに違いないから本人に責任はないという人がいるが、スターリンが国防などの理由から盛んに集団移住させたのは、戦争中のことであって、時期が違う。

移住者は募集され、通常の2〜4倍の高給を目当てにやって来たのである。この時代、ウクライナは飢饉と戦争での損害と人口減少で、不足をロシア人の移住で埋めたとナショナリストたちがいっているのだから、職はいくらでもあったのである。

つまり、日本の返還要求をはねのけるため北方領土をソ連が確保すべく行われた募集に愛国的に応募したのであるから、少なくとも善意の第三者ではない。

その意味でも、ウクライナ支援をするなら、北方領土問題について、旧ソ連の一員としての歴史的責任を明らかにし、また、島民の帰還に協力することくらいは、約束してもらっていいのではないかと思うのだ。

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