まずは、大企業における新入社員期(入社1年目)の労働実態からみてみよう。
1週間の労働時間をみると、1999-2004年卒は「49.6時間」だった。その後は徐々に減少し、2010-2014年卒では「46.8時間」、直近の新入社員(2019年卒〜2021年卒)では「44.4時間」となっている。
労働時間は着実に減少しており、月の残業時間に直せば、おおむね45時間だったものが、20時間ほどになっている計算だ。
また労働時間だけでなく、仕事の負荷感についても、量(仕事量)・質(仕事の難易度)・関係性(人間関係のストレス)すべての負荷が低下傾向にあった。
叱られたことがない新入社員「4人に1人」
また、叱られたことがない新入社員も急増している。
新入社員期に職場の上司・先輩から叱責される機会が「一度もなかった割合」は、1999-2004年卒でみると9.6%。この割合は入社年が最近になるほど高くなっており、直近の新入社員では25.2%になっている。
職場の風土自体も急速に改善しつつある。「休みが取りやすい」や「副業や兼業をする人に肯定的な職場である」、「失敗が許される職場である」などと回答する割合は、直近の新入社員が最も高かった。
このように、現代の職場環境は「ゆるくなっている」と言えるだろう。
職場環境も改善され、風通しも良い──。
「それなら良いことずくめではないか?」と筆者も思っていたのだが、実は調査によって大きな問題点が明らかになってきた。
「ゆるい職場」で若手社員の「不安」が高まっているのだ。
前出の調査のストレスに関する質問では、新入社員の75.8%が「不安だ」と回答しており、1999年卒以降の社員の新入社員期と比べると、むしろ微増の傾向がみられる。
この「不安感」を深堀りすると、興味深いことが分かる。
直近の新入社員の48.9%が、「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」と回答していたのだ。
確かに筆者が実施したインタビューでも、
https://news.yahoo.co.jp/articles/e9b999e24a0f485607daa39d7b661213e2c199c4?page=1
「社外で通用しなくなるのでは、と思っていた。会社の人間関係が良いので居心地は良いが、本音ではこのままではまずいと感じている」
と話す新入社員がいた。
https://www.nishinippon.co.jp/uploads/image/1110624/large_PN2021102201000715.-.-.CI0003.jpg
キャリアモデルが不明確な時代を渡り歩くために必要な成長欲求の高まりに、「ゆるい職場」は応えられていないのかもしれない。