日本は国としてインターネットという新しい技術の将来性を見誤ったことで、その後の年間で成長産業を生み出せず、ずるずると世界での影響力を失っていきました。
このまま行くとメタバースでも全く同じ失敗をすることになる危機感があります。ただ、今回はメタバースは日本に圧倒的な「地の利」があります。実は日本は極めて有利なポジションにあるのです。


「人材・知財・文化」のすべてが揃う、日本の強み

それは日本が漫画・アニメ・ゲームなどの「コンテンツ大国」であるという利点です。
ここまで日常的に漫画を読み、アニメに触れて、ゲームに課金するという国は世界的に見ても非常に珍しいです。日本で作られているコンテンツは海外にも輸出されて人気を博していて、
日本が他国にも誇れる数少ない産業です。

日本は「人材・知財・文化」の3つすべての観点からも他国に比べて下駄を履いてスタートできる有利な状態なのです。
「人材」の観点で言えば、これほど漫画やゲームや映像を作りたい人が溢れている国は珍しいです。

優秀なクリエイターが大量に存在して、業界にノウハウも蓄積されています。「知財」の観点でも有利です。知財とは知的財産権の略でコンテンツの版権のようなものです。
『マリオ』や『ポケモン』や『ワンピース』のような世界的に人気のある作品の知財を持っているので、これをグッズや映画など他のビジネスにも横展開が可能になります。

メタバースにおいてもこういった世界で通用するコンテンツを活用してバーチャル空間を作ることができれば、一気にユーザーを獲得してビジネスを成功させる確率を高められます。
最後に忘れてはいけないのが「文化」の強みです。あまり注目されていませんが、日本はコンテンツに対して最もお金を払う国民性を持っています。

スマホゲームでもユーザー1人あたりの課金額は日本が世界でぶっちぎり1位です。漫画などのコンテンツにもちゃんとお金を払う習慣があります。
メタバースにおいてもアバターやデジタルアイテムを購入するということに最も抵抗がないのが日本人なのです。

自分の国のユーザーが世界で一番コンテンツにお金を払ってくれる国民性というのは、 作り手からするとこれほどありがたいことはありません。

日本経済復活のカギはメタバースしかない

一方で、メタバース以外でもいくらでも新産業などあるだろうと考える人がいるかもしれませんが、他産業では強みを活かせる領域が少ないどころか、絶望的な差がどんどん開いています。
例えば、インターネットの次の産業として注目を集めている宇宙産業ですが、こちらは軍隊を保有して莫大な軍事予算を持っているアメリカや中国のような国が非常に有利です。
将来的に宇宙が戦場になる可能性が高く、制空権ではなく制「宇」権を争うためには、 ロケットや衛星に国を挙げて投資をする必要があります。
もちろん行政や軍隊から民間企業にも発注されるため、産業としての盛り上がりは比べものになりません。また、量子コンピュータのような次世代コンピュータの領域も、GoogleやIBMのような巨大テクノロジー企業が湯水のごとく予算を注ぎこんで開発しているため、差はどんどん開いていっています。

グローバルIT企業のこの分野に対する研究予算は、他の国家の研究予算よりも巨額です。エンジニアや研究者の人材も比較にならないほど層が厚いです。
宇宙開発や量子コンピュータなど次世代産業を作る分野では、日本はスタート地点か らすでに不利なのです。総合的に見渡してみても「コンテンツ大国」という強みを活かせる唯一に近い新産業分野がメタバースです。

日本は徐々に国家としての停滞が顕著になってきていますが、メタバースは久しぶりに日本が世界でプレゼンスが出せる新産業の登場だと見ています。
ですから、もし、国としての新産業の育成を考える立場にある官僚や政治家が「『セカンドライフ』だろ?」「所詮ゲームでしょ?」程度にメタバースを考えていたとしたら、20年前にインターネットで起きた失敗を繰り返すことになるでしょう。

個人が新技術の将来性を読み間違えても本人とその子どもの人生が犠牲になる程度で済みますが、国家が将来性を読み間違えればこれから生まれてくる何千万人の未来が犠牲になってしまいます。
今の20〜40代はまさにそういった犠牲を強いられてきた世代なので、今度は自分たち が次の世代に同じ負担を強いることがないように、新技術に対して真剣に向き合う必要 があります。一方で、インターネットが登場したときの上の世代の反応と、メタバース が登場しつつある現在の大人の反応は極めてよく似ているというのもデジャヴを感じさせます。

https://signal.diamond.jp/articles/-/1115