過酷なノルマ、ルーブル下落…ロシアの厳しい環境にも耐えて働く北朝鮮の出稼ぎ労働者
「まじめさと優れた建築技術が高く評価されています」。2014-22年に沿海州やモスクワ、サハリンなどでインタビューをしてきた李さんは、労働者の働きぶりをこう語る。
代表例が、モスクワ東部カザンのサッカー競技場建設だ。18年のワールドカップでフランスやドイツなど強豪が試合を行った会場の建設には、約3000人が北朝鮮から派遣され、競技場の中で最も早く完成した。
完成が遅れていたサンクトペテルブルクの競技場にも別の労働者たちが駆り出されるほど、北朝鮮労働者の需要は多かった。
一般住宅でも同じだ。ある家主がトイレ工事の見積もりをとったところ、工費3000ドル(約36万円)でロシア人業者は工期1カ月、北朝鮮労働者は工期1週間。後者に発注し、5日後には完成したという。
◆手元に残るのは多くて150ドル
だが、労働・生活環境は決して恵まれていない。重くのしかかるのが「計画分」と呼ばれる、所属会社に毎月納めるノルマだ。李さんの調査では、計画分は1人年間6500ドル前後。
さらに会社の運営費用まで担わされているため、月に1200-1300ドル稼いでも手元に残るのは多くて150ドルほどで、酒やたばこを買うだけで精いっぱいだ。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/168693