成田悠輔評「タコになりたい」 フェミニズムズ/FEMINISMS展
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「ムカムカする」寄稿:上野千鶴子(社会学者) 〜クロスレビュー「フェミニズムズ/FEMINISMS展」成田悠輔氏・鹿島茂氏評を受けて
冒頭は、この一行から始まる。
「フェミニズムってなんかこわい」
クリシェと見せてただちに「いや、その言い方はフェアじゃない」と受けた後は、「既得権のヘドロにまみれたマジョリティに背後から殴りかかり、必要なら容赦なく刺し、血祭りに上げなければならない」のがマイノリティの運動の使命であり、「血の流れないマイノリティ問題・運動は、問題というほどの問題ではないとすら言える」と煽(あお)る。
さらに、「そこで流れた血の海に無実の青い血が混じっていないと信じられる者がいるとすれば、よほど頭の中がお花畑な人だけだろう」と留保をつける。自分が痴漢冤罪(えんざい)の被害者にも目配りのある公平な立場であることを示唆するためだろう。
そう言っておいたあとに、この展覧会は「こわくない」とくる。
「こわい」「こわくない」と判定するのは誰か? 判定する資格を持っているのは、成田さん自身を含む「マジョリティ」ではないのか。「こわい」「こわくない」と判定する立場にいることをこんなにも無邪気に表明するのは、自分がその批判の対象になっているという前提があるからではないのか。「刺されそうでその場から逃げ出したくなる感じがない」としたら、自分が刺される側にいることを自覚しているということだ。
自分を刺さない、だから「こわくない」としたら、そのこと自体で成田さんは自分がマジョリティ側に立っていることを告白している。
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