経済制裁下でも「МИР(ミール)」があれば大丈夫
 毎日の買い物は、Apple Pay、Google Payなどの非接触型決済こそ利用できなくなったものの、
カードでの支払いはこれまで通りできている。3月6日、ビザとマスターカードはロシアでの
業務停止を発表したが、これは国をまたいでの使用ができなくなっただけで、ロシアで発行された
カードは国内においては有効期限まで問題なく使うことができる。今後、制裁の範囲が広がることを見越して、
ロシア独自のカード決済システムであるМИР(ミール)に切り替える者も増えている。
ちなみに、このМИРは2014年のクリミア併合で経済制裁を受けたロシアが、欧米依存から脱却すべく
新たな決済システムを立ち上げたもので、これまで1億1200万枚が発行され、
国内シェアは30%を超えるまでに成長している。ロシア人がよく訪れるキプロス、
トルコ、アラブ首長国連邦、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、
キルギス、ベトナムなどでも使用可能で、今後はエジプトやキューバなどに拡大される予定という。

 店内に目を向けても、ソ連末期のように商品棚がまったくの空ということはない。野菜や果物、
精肉・加工肉、乳製品などのコーナーはこれまで通りの品揃えである。
 一部の品物が入手困難になっているが、これは物価上昇への危機感から来る買い占めによるところが大きい。
人々が小麦粉やパスタ類など長期保存が可能な品物を備蓄し始めたからだ。「お一人様3点まで」などと
購入制限を設けている店もある。
 パンと並ぶ主食とも言えるロシア人の毎日の糧、グレーチカ(蕎麦の実)や砂糖はほ
とんど買えない状態が続いている。生理用品も品薄状態が続いている。しかし、市内
のどこかしらに入荷はしているので、何店舗か回って運が良ければ買い占
めを免れた商品にありつける。日本であったトイレットペーパーの買い占めと同じような状況だ。
 事態を受けて、ロシア政府は3月14日、小麦、ライ麦、大麦、トウモロコシなどの穀物は6月30日まで、
砂糖は8月31日まで国外への輸出を制限すると発表。国内には十分な在庫があり、
品不足は買い占めによる人為的なものだと説明した。
 事実、問題を引き起こしているのは年金生活者のおばあさん方で、
ペレストロイカ時代から染みついた習性なのだろう。

ロシア人の危機を救う「ダーチャ文化」
 基本的にロシア人は、こうした困難な事態に直面した場合、(1)代わりの物を見つける、(2)直して使う、
(3)自分で作る、で対処しようとする(それでも無理な場合は「(4)あきらめる」もある)。
そこはやはりお国柄なのだと思う


KFCやバーガーキングは通常通り営業中だからだ。
国内に1100店以上あるKFCは、70の直営店は閉店したものの、
それ以外はロシア人オーナーのフランチャイズ店であり、契約上は営業を続けることができるのだという。
バーガーキングも然りである。コカ・コーラもペプシも、いまだに販売されている

 赤の広場に面する130年の伝統を誇るグム百貨店では、
ルイ・ヴィトン、ディオール、ブルガリ、カルティエ、エルメス、グッチ、
シャネルなどの高級ブランドが軒並み店を閉じ、何ともきらびやかなシャッター商店街が誕生
している(実際はガラス張りだが)。

 一方で、業務停止を発表してから3、4週間が経つものの、ナイキ、ニューバランス、
ギャップなどはまだ営業を続けている。店員に訊ねてみたが、
閉店の具体的な時期についてはまだ何も情報がないという。

 ボリショイ劇場そばのツム百貨店は、日本で言えば新宿伊勢丹のような品揃えの高級デパートだが、
9割方の店舗がそのまま営業を続けている。
プーチン大統領御用達のイタリア高級ブランド、ロロ・ピアーナもそこで営業中だ。
ルーブル安による大幅価格改定で客足こそ鈍っているが、それでもお金があるところにはあるのだろう。
買い物を楽しむ客がまだいる。
 そして注意すべきは、「ロシアから撤退」と報じられることが多いが、正しくはどの企業も
「一時休業」であるという点だ。

 たとえば、IKEAは国内17店舗を閉じたが、詳細を確認すると、休業は5月31日まで、
1万5000人の従業員の雇用は継続、ロシアから撤退はしないとしている。マクドナルドなど他企業も同様である。
https://news.yahoo.co.jp/articles/788e4f1014b775b5f24b246533959f8e6f36507a?page=4