第19回開高健ノンフィクション賞を受賞し、書籍として1月に刊行された「ソ連兵へ差し出された娘たち」(集英社)の中で関係者が承諾なしに実名を挙げられたとして、岐阜県加茂郡白川町の「旧満州黒川開拓団・黒川分村遺族会」が5日までに、抗議する声明文を発表した。集英社と著者の平井美帆氏に3月、質問状を送ったという。

 書籍は、戦時中に旧黒川村(現在の白川町)から旧満州(中国東北部)に開拓団として渡った女性らの証言などを中心に構成。終戦直後、略奪や暴力から団を守るため、旧満州に侵攻したソ連兵に対して未婚の女性たちを差し出し、性的な「接待」をさせた実態をまとめた。被害に遭った女性や団の関係者は、一部を除き実名で記載されている。

 声明文では「遺族会の役員等についても承認を得ないまま実名で非難するような書き方がされている」と主張。また、初代遺族会会長が辞めた経緯についても「確たる証拠のない伝聞や噂などだけで、関係者の実名を出していることは名誉毀損(きそん)に当たるのではないか」と訴えている。

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