きっかけは一枚のはがき「食べてみたい」…下関のフグ刺し120皿、千葉の小学校へ
2022/04/06 13:28

 山口県下関市の水産加工業者らでつくる「しものせき海響ふく協同組合」が、千葉県八千代市立八千代台東小の児童に、オンライン授業でフグの特徴やさばき方などを教えた。県境を越えた授業のきっかけは、児童から届いた一枚のはがき。「フグを食べてみたい」との願いに加盟店が力を合わせて応え、トラフグのフグ刺し120皿も贈った。(杉尾毅)

 はがきは1月中旬、下関市彦島老町のフグ料理店「たまや本店」に届いた。「都道府県の学習をしています。山口県のフグを食べたことがありません」などと書かれていた。

 送り主は、当時4年生の児童。総合学習の時間に全国の名所や名産を調べる中で山口県のフグに興味を持ち、連絡してみようと思い立った。インターネットで店を調べ、「学年のみんなにフグをください」ともしたためた。

 同店代表の田中 卓意(たくい)さん(43)は「関東の子なので、フグをこの先も食べないかもしれない。食べさせたい」と思い、「友達思いだ」とも感心。その日のうちにはがきに記された学校に連絡した。組合と学校が話し合い、全4年生計約110人にオンライン授業を実施することになった。

 授業は、たまやと教室をウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」で結んで3月中旬に行われた。田中さんら組合メンバーが、フグの特徴や明治時代に下関でフグ食が解禁された歴史などをクイズを交えて解説。田中さんがトラフグの身を薄く切り分け、皿に盛り付ける様子も見せた。

 フグ刺しは、たまやなど組合の6業者が教職員分も含めて20皿ずつ計120皿用意し、事前に宅配。児童は授業の最後にフグ刺しを受け取り、それぞれ自宅に持ち帰った。

 田中さんは「勇気を出してはがきを出してくれた思いに応えたかった。いずれ下関を訪れてフグを食べてほしい」と笑顔で話した。奥井君は「一人だけフグをもらっても思い出に残らないと思っていた。本当に送られてくるとは思わなかった」と喜んだ。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220405-OYT1T50066/