フランス大統領選の公式選挙運動期間が始まった三月下旬の昼下がり。パリから百キロほど北に位置する人口二千人弱の町コンティの商店街で、スーツ姿の男性が歩き回っていた。
 二〇一七年の前回大統領選で決選投票に進出したマリーヌ・ルペン(53)=顔写真、ロイター・共同=率いる極右政党「国民連合」の地方議員フィリップ・テブニオ(61)。少ない人影を見つけては小走りで近寄って声を掛ける。「マダム、暮らしはどうですか?」
 買い物の足を止めた女性(72)は「四十年以上働いたのに年金が月九百四十ユーロ(約十二万円)しかもらえないから、燃料費の値上がりで苦しい」と嘆いた。テブニオがすかさず「ルペンなら燃料の消費税が20%から5・5%に下がります。年金も最低千ユーロを保証しますよ」と政策チラシを手渡すと、女性は「期待しているわ」と返した。
 コンティは現大統領エマニュエル・マクロン(44)の出身地アミアンに程近い。ただ、主要な産業がなく、町の経済は疲弊しているため政党不信が強く、五年前の決選投票でもルペンが僅差で上回っていた。
 町出身の国民連合スタッフ、バンサン・ドゥヌ(30)は「今回はさらに手応えが良い」と話...

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