非常用発電、設置の自治体8割が訓練せず 北海道・総務省調査

 災害時などに使用する非常用発電設備を設置している北海道内144自治体のうち、8割近い113自治体が設備の操作訓練をしていないことが、総務省北海道管区行政評価局の調査で判明した。道内は2018年9月の胆振東部地震で、国内初の全域停電「ブラックアウト」を経験した。同局は「発電設備が整っていても、訓練や定期点検をしなければ災害の備えにつながらない」と指摘する。

 政府の防災基本計画では、地方自治体は非常用電源設備などを配備し、災害発生から72時間は外部からの供給なしに発電できる燃料を備蓄することや、燃料の優先供給に関する協定を事業者と締結することが望ましいとしている。

 18年のブラックアウトを受け、同局は昨年8月〜今年3月、非常用発電設備の整備状況を把握するため、道と道内全179市町村を対象にアンケートを実施。すべての自治体から回答を得たが、調査報告書では自治体名を伏せたうえで、発電設備のトラブル事例などを示した。

 調査報告書によると、非常用発電設備を配備している自治体は道を含めた180自治体のうち80%の144自治体だったが、このうち78・5%の113自治体は設備を操作する訓練を実施せず、47・9%の69自治体は備蓄燃料の点検をしていなかった。

 非常用発電設備を置いていない36自治体は、庁舎の構造上の制約や財政難などを理由に「常備している可搬型の発電機を使用する」「レンタルする」などと回答。このうち15自治体は「新庁舎建設に合わせて導入する」とした。

 非常用発電設備は停電時に自動で起動する設計になっている。このため、訓練を実施していない113自治体のうち40自治体が「訓練の必要性がないと判断した」と回答した。これに対し同局は「災害時に確実に起動するとは限らない」として、日ごろの訓練の重要性を指摘する。

 また、発電設備は燃料を補給するために一時停止し、補給後に再稼働させる必要がある。ある自治体は、胆振東部地震で初めて燃料補給のために一時停止させる必要性を知り、電気保安協会から説明を受けながら操作方法を学んだという。ほかにも「自動で起動したものの、必要な場所や機器に電気が流れなかった」「1人しかいない操作担当の職員が他の業務で多忙だったため、他部署の前任者が対応した」といった事案もあった。

 発電設備を設置していても、備蓄燃料が経年劣化すると故障する恐れがある。69自治体が「備蓄燃料の点検をしていない」と回答し、中には胆振東部地震の際に「劣化が判明し燃料を補給できなかった」という自治体もあった。

 同局は備蓄燃料の定期交換を推奨するが、「交換に多額の費用がかかる」「古くなった燃料の活用先が見つからない」などと悩む自治体も多い。報告書では「公用車の燃料として活用」など工夫している自治体の事例も紹介。報告書は道内全自治体に配布する予定で、同局の担当者は「今後の参考にしてほしい」としている。
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