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北朝鮮 来週は特別な週 10年に1度の節目相次ぐ

来週、北朝鮮では節目となる記念日が相次ぐため、国威の発揚や指導者の権威を高める目的でさらなるミサイルの発射や核実験などに踏み切るのではないかという懸念が高まっています。
北朝鮮の情勢について長年取材している国際部の高野洋デスクが解説します。
4月11日と4月15日 北朝鮮にとってどんな日?
まず4月11日は、キム・ジョンウン総書記が朝鮮労働党のトップに就任してから10年という節目です。
そして4月15日は、キム総書記の祖父キム・イルソン主席の生誕110年で、こちらは「民族最大の祝日」とされています。
北朝鮮が国を挙げて祝う10年に1度の節目が相次ぐことから、来週は特別な週だといえます。
重要な節目 過去にはどんなことが?
10年前のキム主席生誕100年の時には、事実上の長距離弾道ミサイルを発射しました。
その際、北朝鮮は「人工衛星を打ち上げる」として海外メディアに初めて発射台を公開。
高さ50メートルの発射台には事実上の長距離弾道ミサイルである3段式のロケットが据え付けられていました。
200メートルくらいまで近づけたんですが、責任者は、命令がありしだい燃料を地下から自動的に注入、すぐに発射できると説明していました。
来週もミサイルが発射される可能性はあるのか?
可能性は十分あると思います。
北朝鮮は今年に入って1月、2月、3月と毎月弾道ミサイルを発射。
今月もいつ発射してもおかしくありません。
キム総書記は先月、固定式の発射台を視察し、偵察衛星などの打ち上げに向け施設の改修や拡張を指示していて「人工衛星の打ち上げ」と称してICBM級を発射することも考えられます。
キム・ジョンウン政権になってから発射された弾道ミサイルは、この10年間で106発と、父のキム・ジョンイル政権が17年間で発射した16発の実に6.6倍に上っています。
さらに、去年1月に打ち出した「国防5か年計画」には、直ちに発射できる固体燃料を用いたICBMや、ミサイルに複数の弾頭を積む「多弾頭化」、戦術核兵器などの開発が盛り込まれています。
技術的な要求に加え、国威の発揚や指導者の権威づけを目的に計画の達成を急ぐおそれがあります。
もう1つの焦点 今後「核実験」に踏み切るのか?
北朝鮮は2018年以来、核実験を事実上凍結してきました。
こちらは、北朝鮮北東部プンゲリにある核実験場の図です。
過去6回の核実験は全てここで行われてきましたが、2018年、北朝鮮は史上初の米朝首脳会談を前にして「閉鎖した」としていました。
ところが最近、これまで一度も使われたことがない「3番坑道」で新たな動きが衛星写真で確認されました。
核兵器の小型化・軽量化を実現しようと、7回目の核実験に踏み切る可能性が指摘されています。
ウクライナ情勢が与える影響は?
ウクライナがいま軍事侵攻を受けているのを見たキム総書記が、「体制を守る上で核兵器は欠かせない」と改めて確信したとしても不思議ではありません。
ウクライナは、ソビエト崩壊後の1994年、アメリカ・イギリス・ロシアから安全の保障を受けるとした「ブダペスト覚書」にサインし、旧ソビエト時代から保有してきた核兵器を放棄しました。
これによって今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻に抑止力が働かなかったと、キム総書記が考えている可能性があります。
また、国連安全保障理事会はいわば“機能不全”の状態で、先月の北朝鮮によるICBM級「火星17型」の発射でも、中国とロシアの反対で非難決議は採択されませんでした。
気兼ねなく核・ミサイル開発を進められる好機が到来したと捉えているのではないかと思います。
今後、北朝鮮はどう出てくるのか?
北朝鮮は、アメリカ・バイデン政権において中国やロシア、イランなどに比べ北朝鮮の優先順位が低く、不満が強いと言われています。
対話局面は当面来ないと踏んで、挑発をエスカレートさせるおそれがあります。
また、韓国で来月、5年ぶりの保守政権が誕生することも影響しそうです。
ユン・ソギョル次期大統領は、米韓同盟を基盤に北朝鮮に対する抑止力を強化するとしていて、朝鮮半島の緊張が高まることも予想されています。
キム総書記は現在38歳とみられます。
今後数十年にわたって政権を率いる可能性があり、長期戦の構えです。
北朝鮮がさらに核・ミサイル開発の速度を上げていくのか、来週はその姿勢を見極める上で重要な週になりそうです。