――ウクライナへの軍事侵攻によって、プーチン大統領への国際的な非難が高まっています。どうして、ロシア国民はこのような独裁政治を許しているのでしょうか。

本村凌二(以下、本村):ロシアにはこんなジョークがあります。ニキータ・フルシチョフの時代にフルシチョフを馬鹿者呼ばわりした人がいたので、フルシチョフが「そいつを捕まえて死刑にしろ」と言いました。

 周囲の人が「どうして馬鹿者呼ばわりしただけで死刑になるのだ」と聞くと、フルシチョフはこう答えました。「国家最高の機密をばらしたから」。

 こんなジョークが出てくることからも、ロシア国民は独裁政治を当然のこととして受け止められているといえます。
ロシアでは、共産主義の時代よりもはるか以前から、指導者に独裁性が見られます。国民はすっかり独裁政治に馴染んでしまっているんですね。

 なにしろ、ロシアは地理的に異民族の脅威に晒されています。隙を見せれば襲来してくる異民族と対等に渡り合うには、「強いリーダー」でなければなりません。ロシアで独裁者が支持されやすいのは、そんな背景も関係しています。

――強いリーダーでなければ、国としての体制が保てないということなんですね。島国に住む日本人には理解しにくい感覚かもしれません。

本村:たとえハッタリでも、自分を誇示して信念を貫く。ロシアでは、そんな強いリーダーこそが価値ある人間とされています。

 一方、日本では、穏やかでバランス力があり、周囲に忖度できるリーダーが好まれる傾向にあります。ロシア国民に支持されるようなリーダーは、日本人だったらむしろ嫌われるタイプではないでしょうか。

https://diamond.jp/articles/-/300267