ウクライナ侵攻を続けるロシアに厳しい制裁を科す欧米と協調する日本は、東南アジア各国にも同様の対応を求めたい考えだ。

 制裁の「抜け穴」をふさぎ、実効性をより高める狙いがある。ただ、伝統的にロシアとのつながりが強い国もあり動きは鈍く、日本が思い描く対ロ包囲網を築くのは容易ではない。

 日本、フィリピン両政府は9日、東京都内で外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を初開催。共同声明では、ウクライナ情勢について「国際法の深刻な違反」と指摘したが、ロシアを名指しすることは控え、制裁措置にも触れなかった。

 東南アジアにはロシアとの結び付きが強い国が少なくない。東南アジア諸国連合(ASEAN、10カ国)では、社会主義国のベトナムとラオスがロシアとの関係が深いことで知られる。7日に行われた国連総会の緊急特別会合で、人権理事会におけるロシアの理事国資格停止の決議が採択されたが、ベトナムとラオスは反対した。

 ASEAN全体で見ても及び腰の姿勢が目立つ。ASEAN各国外相は3月3日付の声明で停戦を求めたが、ロシアへの直接の言及は避けた。その後、対ロ経済制裁に踏み切ったのはシンガポール1カ国にとどまる。

 岸田文雄首相が3月にカンボジアでフン・セン首相と会談した後に発表した共同声明でも、「武力行使の即時停止とウクライナ領土からの軍撤退」を求めたものの、ロシアを名指ししなかった。

 外務省関係者は「東南アジアの国々は強くない。国連安保理の決議も出ていない中、一方的に制裁を科すことには抵抗がある」と解説する。外務省幹部は「それぞれの国の都合がある。力ずくで無理やりやらせることはできない」と語る。

 自民党内では「対ロ制裁の抜け穴にアジアがならないよう汗をかくべきだ」(佐藤正久外交部会長)との声が出ている。岸田首相は今月1日の国会答弁で、アジア各国に「引き続き働き掛けを行う」と述べたが、その後に大きな動きは見られない。与党の突き上げにどう応えていくのか、政府は難しい課題を突き付けられている。 

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