https://biz-journal.jp/2022/04/post_289349_2.html

ドル以外の通貨への分散投資が加速

 米国の金融市場に流動性を供給してきたのは海外勢、特にオイルマネーだ。
産油国が毎年石油収入を元手に多額の米国債を購入することで基軸通貨ドルの価値が保たれてきたから、
現在の国際通貨システムは「ペトロダラー体制」と呼ばれることが多い。

 だが、米国がロシア中央銀行が保有するドル資産を凍結したことで動揺が広がっている。
ドルを決済に使えなくなったことで事実上デフォルトに追い込まれつつあるロシアの惨状を見て、
「明日は我が身」と捉え、米国との関係が良好ではない国々の間で米ドルへの依存を減らす動きが活発化するとの憶測が出ている。

1974年以来、ドル建てで石油取引を行ってきたサウジアラビアの1月の米国債保有額は1190億ドルとなり、
2020年2月の1850億ドルから大幅に減少した。
原油価格の高騰で潤っているのにかかわらず、米国債を買い増す動きを示していない。

 米国政府はドルを経済的な兵器として使う傾向が強まったことが災いして、
世界の中央銀行の外貨準備高に占めるドルの割合は1999年の71%から昨年59%に減少した。
ドルは現在でも世界第1位の準備通貨だが、今回のロシアに対する制裁で多くの国々がドル以外の通貨への分散投資を加速させてしまうのではないか。

 ドルが準備通貨の地位にあるおかげで米国債をはじめとする米国資産の需要が堅調だったのだが、
米国自身がその基盤を毀損しているという皮肉な構図となっている。