「子どもの自己肯定感がじわじわ上がる」親だからこそできる"家庭の性教育"
自分の子どもに「性」をいつ、どう伝えればいいのでしょうか。大妻女子大学の田中俊之さんは「性について教えるタイミングは、子どもが質問してきたときが最大のチャンス。算数や国語を教えるのと同じ感覚で教えるのがいい」といいます――。
■性教育を受けていない親世代
近年、子どもへの性教育について関心が高まっています。今の親世代には、家庭や学校でしっかり性教育を受けてきた人はあまり多くありません。そのため、わが子への性教育の必要性は感じていても、「自分も受けていないしどう伝えたら……」と悩むことが多いようです。
子育てに関わる事柄では、世間には「何歳までに〜しなければならない」といったハウツーものがあふれています。でも、一口に子どもと言っても、性格や発達度は一人ひとり違うもの。何をいつ教えるかはその子の個性を抜きにしては語れません。ですから、性教育も「何歳までに教えなければならない」と一概に言えるものではないと思います。
僕は、子どもが興味を持ったときに、その子の発達に合わせて教えていくのが望ましいと考えています。そのためには、まず親が正しい知識を持っておくことが大事です。特に、家庭や学校で性教育を受けた記憶がない人は、信頼できる専門家の本を読むなどして、正しい知識や伝え方を予習しておくことをおすすめします。
わが家の上の息子は、3歳のとき自分に睾丸があることに気づき、「これ何?」と聞いてきました。僕は「赤ちゃんのもとが入っているんだよ」と教えました。せっかく興味を持ったのだから、ごまかさずに事実を、子どもの発達段階に合った表現で伝えたいと思ったからです。
■プライベートゾーンについては早目に教える
性について教えるタイミングは、子どもが質問してきたときが最大のチャンスと言えます。ただ、水着で隠れる部分「プライベートゾーン」については、子どもが聞いてこなくても、小学校に入る前に教えておいてあげたほうがいいでしょう。
「ここは誰にとっても大切な部分で、他人に見せたり触らせたりしてはいけないし、自分も勝手に見たり触ったりしてはいけないよ」というように、わかりやすく説明してあげてください。
プライベートゾーンを大切にするようにと教えることは、自分で自分を大切にするようにと教えることでもあります。わが子には、自分の存在を大事に思える人間になってほしいものです。そのためには、「自分の体には大切な部分、他人の勝手にさせてはいけない部分がある」とわかってもらう必要があります。
そうすればおのずと、他の子にも同じように大切な部分があること、勝手に見たり触ったりしてはいけないこともわかってくるでしょう。プライベートゾーンについて教えるときは、自分の体だけでなく他者の体への理解を促すことも重要です。なぜなら、将来的には性的同意の話にもつながっていくからです。
■子どもの自己肯定感が上がる教え方
プライベートゾーンについて話すことは、子どもの中に2つの要素を育むうえでとても役立ちます。ひとつは自分を大事に思える心、すなわち自己肯定感です。そしてもうひとつは、他人を無意識に傷つけない心です。
自己肯定感は人が自分に自信を持つための基礎となるもので、これが低い人は人生においてさまざまなつらさを抱えてしまう傾向があります。自分で自分を肯定できないと、肩書や名誉といった周囲の評価を求めがちになりますが、人生にはそれがかなえられない場面も多々あります。そんなとき、本人が非常につらい思いをするだろうことは想像に難くありません。
自分の体を大事に思えるようになることは、自己肯定感を高めることにもつながります。ですから、子どもにはぜひ「あなたの体やあなたの存在はとても大事なものなんだよ」と伝えてあげてください。特に体は、抽象概念ではなく実体があって触れるものなので、子どもにも理解しやすいと思います。
性に関しては、子どもに突然聞かれてドギマギすることもあるでしょう。親自身も答えがわからない、という場合もあるかもしれません。そんなときも、あやふやなまま終わらせるのではなく、「パパもママもわからないから一緒に調べてみようか」と、子どもの興味に寄り添ってあげたいものです。今は、人体に関する図鑑でも子ども向けのものがたくさんありますから、そうした教材を使って一緒に調べてみてはどうでしょうか。
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https://president.jp/articles/-/56302