日本に暮らす脱北者の祈り「命あるうちに、北朝鮮に囚われた家族に会いたい」


脱北者の鈴木ハナさん(仮名)が日本に来ていちばん驚いたのは、「働けば誰もが賃金をもらえること」だった。

北朝鮮では父と姉との3人暮らし。土木関係の国営企業に勤めていた父が、給料をもらえたことはほとんどなかった。食料配給も滞り、いつもひもじい思いをしていた家族のためにハナさんは山で薬草を集めて売り、そのわずかな稼ぎで家計を支えた。学校での成績は優秀だったが、家が貧しいために進学は断念した。

ハナさんが5歳のときに脱北して日本に暮らす母親は、娘たちにときおり送金をしてくれた。だがあるとき、その金が警察に見つかり、姉妹は逮捕される。どうやって日本円を手に入れたのかと、警察はまだ12歳のハナさんを執拗に尋問し、金をすべて没収した。そのときにかけられた手錠の痛みは、いまも忘れられない。

いつか母の暮らす日本へ行こうとハナさんが決意したのは、そのときだったという。
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