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肥満でなくても動かなければ不健康に…わずか24時間でも筋肉に脂肪蓄積 順天堂大学大学院田村好史先任准教授に聞く

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運動不足は不健康につながるといわれる。肥満でもない人は、「なぜ?」と疑問に思うかもしれない。一般的に心筋梗塞や脳卒中のリスクは、内臓肥満を伴うメタボリックシンドロームで上昇する。男性の場合腹囲85センチ以上(女性は90センチ以上)に、脂質異常症、高血圧、2型糖尿病のいずれか2つ以上が診断基準だ。つまり、内臓脂肪の多い肥満がよくない。暴飲暴食で急激に体重が増えれば不健康というのは、理解できる。一方、普通食を心がけていても、ステイホームの運動不足はよくないといわれる。これはなぜなのか。
「肥満はメタボリックシンドロームの根源ともいうべき、インスリン抵抗性を生じさせます。肥満でなくても身体を動かさないでいると、短時間でインスリン抵抗性が起こるのです」

こう説明するのは、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学/スポーツ医学・スポートロジー先任准教授の田村好史医師=顔写真。アジア人が太っていなくても2型糖尿病になりやすいメカニズムなどについて、数多くの研究成果を挙げている。

「私たちの研究では、わずか24時間の不活動でも、インスリン抵抗性が起こることがわかりました。そのメカニズムも明らかにしています」

インスリン抵抗性は、血糖値をコントロールするホルモンの一種・インスリンの効きが悪くなる状態を示す。たとえば、食後に血糖値が上がると、膵臓からインスリンが分泌されて血糖値は正常値に導かれるが、インスリン抵抗性になると、膵臓からインスリンが分泌されても、効きが悪いので血糖値が下がりにくい。筋肉細胞へのブドウ糖の取り込みが悪くなるからだ。インスリン抵抗性は、そもそも内臓脂肪が原因とされていたが、不活動、すなわち運動不足も関係していたのだ。

田村医師らの研究グループは、片脚をギプスで固定した不活動モデルのマウスを作成し、代謝機能の影響を検証した。すると、24時間後には骨格筋(筋肉)のインスリン感受性が半減し、インスリン抵抗性が起こることがわかった。普通食よりも高脂肪食を食べた後の方が、不活動によるインスリン抵抗性発生の程度がさらに悪くなった。

「高脂肪食を食べると、筋肉は一定量の脂肪を取り込みます。24時間の不活動だけでも骨格筋の脂肪量は増加し、それがインスリン抵抗性を引き起こします。この状態を高脂肪食がさらに後押しするようなイメージです」

筋肉に脂肪が蓄積すると代謝が落ちてインスリン抵抗性につながる。それがたった24時間動かないだけでも起こるのは、筋肉に脂肪がたまる仕組みが大いに関係していた。次週紹介する。

■わずか24時間の不活動で筋肉に脂肪が蓄積!

普通食のマウスと高脂肪食のマウスを24時間不活動状態にし、骨格筋のインスリン感受性と、中性脂肪のもととなる脂質(DG)の量を計測。すると、不活動がないマウスと比較して、不活動のマウスはインスリン感受性が半減し、インスリン抵抗性状態になることがわかった。反対に、骨格筋DG量は増加、筋肉に脂肪がたまっていた。高脂肪食のマウスはその変化が顕著だった。