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映画「ファンタスティック・ビースト」、中国で同性愛のせりふを削除

米ワーナー・ブラザーズは、映画「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」の中国上映版から、同性愛に関するせりふを削除した。登場人物のアルバス・ダンブルドアとゲラート・グリンデルバルドの過去の恋愛関係をほのめかす6秒間のシーンがカットされた。

原作者のJ・K・ローリング氏は2007年、「ハリー・ポッター」シリーズにも登場するダンブルドアが同性愛者だと述べていた。しかし映画シリーズではこれまで、ダンブルドアの性的指向をはっきり示す表現はなかった。

製作会社のワーナー・ブラザーズは、「映画の精神は残っている」と説明している。

中国で上映されるバージョンでは、ジュード・ロウ氏演じるダンブルドアとマッツ・ミケルセン氏演じるグリンデルバルドが交わす会話から、「君を愛していたからだ」、「私がゲラートと恋した夏」といったセリフが削除されている。

それ以外の部分は編集されておらず、2人が深い絆で結ばれていることなどは表現されている。

「微妙な編集」
米誌ヴァラエティーに出した声明でワーナー・ブラザーズは、「発表する映画ひとつひとつのまとまりを維持することに注力している」とした上で、特定の市場のために「微妙な編集」を「慎重に」行うこともあると説明した。

「希望としては、制作者が発表したとおりに世界中に作品を発表したいが、歴史的にも、各市場に向けた細かい編集を施してきた」

「今作については、現地から6秒間のシーン削除が要求され、ワーナーブラザーズはそれを受け入れた。だが、この映画の精神はなお生きている」

「世界中の人々にこの映画を楽しんでもらいたい。中国の観客にも、こうしたわずかな編集があっても、同様に楽しんでもらう機会を持ってもらうことが、我々には重要だ」
中国では20年以上前から同性愛が合法化されており、2001年には精神障害の認定からも除外されている。

しかし同性婚は認められておらず、LGBT(性的マイノリティー)の人々はなお、伝統的な価値観を持つ家族に受け入れられずに苦しんでいる。

2016年に国連が行った調査では、中国の性的マイノリティーのうち近親者に自分の性的指向を打ち明けているのはわずか16%だった。

イギリスでは2018年、「ファンタスティック・ビースト」シリーズの前作でダンブルドアが「きちんと」同性愛者として描かれなかったことに、多くのハリー・ポッターファンが失望した。

しかし同シリーズを手掛けるデイヴィッド・イエーツ監督はBBCのラジオ番組に出演した際、人々はすでに、ダンブルドアとグリンデルバルドが「互いの考え方やイデオロギー、そしてお互いを愛していたこと」に気づいているはずだと述べていた。