日本企業が欲しいのは結局、「自分で考える人」か「上司の意をくむ人」か

4月1日に家電などの量販店を運営するグループの入社式に取材で出席した。
「礼」などのリハーサルから式の終わりまで初めて目にしたが、入社式は
フランスにはないものだから大変勉強になった。同時に、いろいろと
考えさせられる経験だった。

新入社員はおよそ900人で、わりと大きい入社式だった。ルールも
厳しかった。新入社員は会場内では自由に座ることはできず、
前の数列は女性、後ろの数列は男性と決まっている。もちろん全員、
黒のスーツに白のシャツ。司会者が「新入社員起立、礼、着席」と言ったら、
全員同時に動く。それを本番前に何度も練習していた。数人でも
タイミングが合わない場合は、やり直さないといけなかった。

(中略)

社長の挨拶には何十回も「努力」という言葉が出て、努力するかどうかで
社員を評価するのかと驚いた。何を努力するのか、それをどう判断するのか分からないからだ。

社長は「上司が言うことはどうでもいい。大事なのは自分で考えて行動すること」とも強調した。
ただ、それは目の前の光景ととても矛盾する内容ではないかと私は思った。
皆同じ制服のようなスーツを着て、皆同じような姿勢を取る。
皆同時に同じ言葉を聞いて、同時にメモを取る。

「自分で考えて行動する」とは真逆の態度だが、おそらく社長はそれを求めている。
おそらく全ての新入社員も「自分で考えて」その態度を決めた。
この「自分で考えて行動する」について、フランス人の理解と日本人の理解は異なるようだ。

私からすると「自分で考えて行動する=自由に決めて自由にやる」。
でも、たぶん多くの日本人にとっては「自分で考えて行動する=相手が望んでいる態度を
よく理解した上で行動する」。教育や社会環境によって、言葉の意味が大きく
異なることに改めて気付いた。それでも日本人経営者とフランス大統領が言いたいことは同じ。
両者とも同じような社員や国民を評価する。
つまり行動する人、諦めない人、全身全霊で働く人。目標は成功と成長だ。

https://www.newsweekjapan.jp/tokyoeye/2022/04/post-107.php