ウクライナ侵攻が世界的な食糧危機の引き金に? その主要因は......(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/ea358fdb7ece364f3a264a6b7b6c3c717c701f78

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は世界の食糧事情にも深刻な影響をおよぼすおそれが懸念されている。

●動画:ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に

■ ロシアとウクライナはともに世界有数の穀倉地帯

ロシアとウクライナはともに世界有数の穀倉地帯として知られる。ウクライナの2021年の小麦生産量は3216万トンで、そのうち約73%の2380万トンを輸出している。主な輸出先はインドネシア、エジプト、パキスタン、バングラデシュ、モロッコだ。

一方、ロシアは2021年に7750万トンの小麦を生産し、そのうち約52%の4000万トンをエジプト、トルコなどへ輸出。中東やアフリカを中心とするこれらの国々では、今後、この軍事侵攻の影響により、食品の値上げが見込まれる。

ウクライナはトウモロコシの輸出国でもある。2021年の生産量は3965万トンで、そのうち85%超の3400万トンを中国、スペイン、オランダ、エジプト、イランなどへ輸出している。

また、ロシアとウクライナは、ヒマワリ種子やヒマワリ種子油を含む加工品の輸出も盛んだ。中国は2020年9月から2021年2月の半年間で両国から約110万トンのヒマワリ種子油を輸入した。

■ 農業用肥料に不可欠な原料の塩化カリウム

この軍事侵攻は、2022年春以降の食料生産にも影響をもたらすおそれがある。ロシアとその同盟国ベラルーシは、農業用肥料に不可欠な原料である塩化カリウムの主要輸出国だ。両国の生産量は世界全体の37.6%を占めている。

ロシアから多くの原材料を調達する北欧ノルウェーの肥料メーカー大手ヤラ・インターナショナルのCEO(最高経営責任者)スヴェイン・トーレ・ホルセザー氏は、BBC(英国放送協会)の取材で「軍事侵攻前から厳しい状況にはあったが、サプライチェーンにさらなる混乱が生じている」とし、「北半球では今シーズンで最も重要な時期に近づいており、多くの肥料が移動するタイミングであるため、その影響を受ける可能性が高い」と懸念を示す。

■ 「食糧危機が起こるか否かではなく、どれほど大きくなるかだ」

ロシア産業貿易省は2022年3月4日、国内の肥料メーカーに輸出を一時的に停止するよう勧告した。ホルセザー氏は「世界人口の約半数が肥料のおかげで食料を得ている。もし一部の農作物で圃場から肥料がなくなったら、収穫量は半減するだろう」との見通しを示し、「もはや世界的な食糧危機が起こるか否かではなく、これがどれくらい大きくなるかだ」と警鐘を鳴らしている。