三重の養殖アサリに注文相次ぐ 「熊本産」偽装問題受け再評価

 三重県鳥羽市浦村町の生浦(おうのうら)湾で育てた養殖アサリに、問い合わせや注文が相次いでいる。中国などからの輸入アサリが「熊本産」として流通していた問題が表面化し、アサリの採苗(さいびょう)から出荷までを一貫して同湾で行う取り組みが改めて評価されたためだ。

 養殖を行うのは「浦村アサリ研究会」。浅尾大輔代表(42)は「(幼生を稚貝に育て、一定の大きさになったものを海に移して育成する)完全養殖に向けた研究段階にあり、必ずしも要望には応えきれない」とするが、産地が明らかなアサリの需要に手ごたえを得ている。養殖量を今後、1・5倍に増やすつもりだ。

 カキ養殖を本業とする若手漁業者らが、オフシーズンにアサリ養殖を行おうと、2009年に研究会を結成した。国や三重県内の研究機関などの協力を受け、カキ殻の粉末を加工した固形物を、5キロずつ網袋に入れて砂浜に設置。春と秋に産卵し、海に漂うアサリの幼生を、満潮時に水没した袋内に着底させて育てるという画期的な養殖を始めた。11年に東日本大震災の津波があって一時中断したが、翌年大きく育ったアサリの水揚げに成功した。

 22年2月に産地偽装問題が発覚すると、急に問い合わせが増えた。連日2〜3件の電話を受け、飲食業者からの購入希望だけでなく、同業者からも「アサリの育て方を教えてほしい」と依頼があるという。「いかに産地が消費者にとって重要な問題なのかを思い知らされた」(浅尾代表)。

 アサリを養殖するための網袋の数は年々増え、現在は約500袋が設置されている。固形物によってアルカリ性が適度に保たれ、アサリの生育は順調という。注文増に対応するため、6月ごろの産卵時には750袋に増やす見込みだ。

 研究会では、独自の産地証明書の発行を予定するほか、養殖方法の改良など試行錯誤を続ける。産地偽装の背景には国産アサリの減少があるとされるが、浅尾代表は「全国の漁業者が連携し、技術などを惜しみなく教え合うようになれば、アサリの絶滅はきっと防げる」と話している。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5db3a2218b2300768227c08bdf8bb7b56e341a05