ウクライナ当局はロシアの侵攻が始まってから50日間で、死亡または捕虜となったロシア兵8600人以上に対し、顔認証検索を行ったという。遺体の顔をスキャンして身元が特定できれば、ロシアにいる家族に訃報を知らせる──顔認証技術の応用例としては、最も恐ろしい使われ方かもしれない。

ウクライナのIT軍によれば、これまでに582人のロシア兵の死亡を家族に知らせ、放置された状態の遺体の写真を送った例もあるという。

活用されているのは、米テック企業「クリアビューAI」のソフトウェアだ。ウクライナ側は、残酷な方法ではあるが、ロシア国内の反戦世論をかき立てて戦争終結を早めるために効果的な手段だとしている。

しかし、この戦略が裏目に出る可能性もあると指摘する軍事アナリストやテクノロジー専門家たちもいる。ロシア兵の母親たちに向けた「ショック作戦」が、ロシア側の怒りを煽りかねないのだ。

(中略)

先日にウクライナIT軍がテレグラムに投稿した動画では、ロシア人兵士の親族との会話の一部が映っている。あるチャットでは、ロシア兵の母親に「あなたの息子は亡くなった」と、遺体の写真と一緒に送られていた。兵士の顔は歪み、口は大きく開いたままの写真だ。

「なぜこんなことをするの?」と母親は返信。「私に死んでほしいの? 私はもう生きていない。あなたはきっとこれを楽しんでいるのでしょう」

https://courrier.jp/news/archives/285561/