もしサイコパスやナルシストに、「共感力」が備わっていたら──イギリスの心理学者らによって最近発見された「ダークエンパス」なる人々は、どのように人を傷つけうるのだろうか。

最も危険な人格?

サイコパスやナルシシズムなどの「闇の性格特性」を持つ人たちは、本質的に、冷酷かつ不愉快で、こちらに敵意を見せてくる可能性が高いと言われている。

こうした特性はスペクトラムのなかに存在する。すなわち、誰もが多少はこうした特性を持っており、必ずしもパーソナリティー障害と診断されるというわけではない。

従来、「闇の性格特性を多く持つ人は共感能力に欠け、それゆえ、そうでない人たちよりも危険で攻撃的になりうる」というのが定説とされてきた。

しかし最近、私たちはこの考えに疑念を生じさせる存在を発見した。学術誌「人格と個性」に掲載された私たちの研究では、闇の特性を持つ人のなかに、平均以上の共感能力を持つグループがいることを突き止めたのだ。

私たちは、彼らを「ダークエンパス(闇の共感者)」と呼ぶ。この研究が発表されて以降、ダークエンパスは最も危険な人格だというイメージが広まった。しかし、本当にそうなのだろうか?

そもそも「闇の性格特性」って?

闇の性格特性には、サイコパス、マキャベリズム、ナルシシズムがあり、これらは「ダークトライアド」と総称される。最近では、ここにサディズムを加えて「ダークテトラッド」と称されることもある。

サイコパスに特徴的なのは、うわべの魅力と本質的な冷徹さだ。こうした特徴を強く持つ人たちは、しばしば社会規範から逸脱する生活を送ったり、反社会的な行動を起こしたりする。

マキャベリズムは、ルネサンスの作家で歴史家、哲学者でもあったニッコロ・マキャベリの著作に由来する。マキャベリは、裏切り行為や背信、犯罪などを含む政治的駆け引きについて書いており、したがってマキャベリズムとは、他者を搾取し、冷笑し、洗脳する性質を指す。

ナルシシズムは、過剰な権利意識、優越感、誇大妄想に特徴づけられる。また、サディズムは、他者を傷つけ、それを楽しみたいという衝動を指す。

こうした闇の特性、とりわけサイコパスとマキャベリズムは、一貫して攻撃的かつ反社会的な行動と結びつけられてきた。

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