https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=1&;n_m_code=121&ng=DGKKZO60270510S2A420C2EA5000

マスク氏、財源6兆円の裏付け公表 ツイッター買収提案 邦銀・投資会社提供へ

米ツイッターの買収を提案している米起業家イーロン・マスク氏は21日、金融機関からの借り入れや自己資金の投入で総額約465億ドル(約6兆円)を確保したと公表した。財務的な裏付けを示し、買収への本気度をアピールした形だ。米欧や日本の大手銀行に加え、投資会社など「シャドーバンク(影の銀行)」の存在が、短期間での巨額調達を可能にした。


マスク氏は4日に約9%分のツイッター株を取得したと表明し、13日には残る90%超を1株あたり54ドル20セントで購入すると提案した。ツイッターの取締役会は15日、同社の株式を無制限に取得できないようにする防衛策「ポイズンピル(毒薬条項)」を導入し、買収提案を拒否する構えをみせる。マスク氏が株式の買い付けを強行すれば、敵対的買収に発展する可能性が高い。

マスク氏は21日、資金調達計画の詳細を公表した。資金確保を内外にアピールすることでツイッター株主からの支持を期待するほか、同社取締役会に提案を真剣に検討するよう圧力をかける狙いがありそうだ。マスク氏は開示文書のなかで、自らの提案に対しツイッター取締役会が「応答していない」と述べた。

マスク氏は2018年にテスラの株式非公開化を検討した際、詳細を明かさないまま「資金を確保した」と発言した。最終的に計画を撤回すると、テスラの株価は急落し、市場の信用を一時的に失った。今回のツイッター買収では前回の過ちを繰り返さないよう、入念に準備している様子がうかがえる。

総額465億ドルの内訳は(1)金融機関からの借り入れ130億ドル(2)マスク氏保有のテスラ株を担保にした125億ドルの融資(3)マスク氏が自己資金210億ドルを投じるエクイティファイナンス(新株発行を伴う調達)――となる。(1)の担保にはツイッターの資産を充当するみられる。マスク氏は借り入れ主体となる新会社「XホールディングスI」などを設立済みだ。

融資団にはマスク氏の助言役を務める米投資銀行モルガン・スタンレーのほか、米バンク・オブ・アメリカや英バークレイズ、仏BNPパリバなど米欧の大手銀が名を連ねた。邦銀からはモルガンに出資する三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と、みずほフィナンシャルグループが加わった。

もっとも130億ドルの融資のうち、銀行が最終的に自社のバランスシート(貸借対照表)から拠出する金額はそれほど多くないとみられている。買収対象企業の資産や収益力を担保とするLBO(レバレッジド・バイアウト)向けローンの場合、融資を証券化して投資会社などに売却するケースが多い。ある米銀関係者は「たいてい契約時点でローンの転売先が決まっている」と話す。