佐賀県江北町の六角川・鳴江水門のゲートが開いたまま放置され、町内の水路に海水が流れ込む事態が発生した。
町は22日、緊急の対策本部会議や農家への説明会を開き、山田恭輔町長は「町の農業にとって大きな危機だ」と述べた。
今後、県などが水路の水や農地の土壌を採取し、塩分濃度などのデータを集めて対策に生かす。(鹿子木清照)

事態が発覚したのは、21日午前8時頃。
地元農家が「雨でもないのに農地の表面が湿っている」と町に通報し、職員が水門を確認したところ、閉じているはずのゲートが約18センチ上がっていた。
そこから海水が水路に流れ込んだとみられる。

水門は、梅雨期を前に国交省武雄河川事務所が点検作業を業者に発注。作業を終えた20日夕に閉め忘れたらしい。
同事務所は「いったん閉めた後、別の作業をするために開け、その後戻さなかったようだ。深夜の満潮時間帯に流れ込んだ」としている。
影響が心配されるのは水路延長で約10キロ、農地面積は約150ヘクタールで、町全体の農地の約14%に達する。

対策本部会議では、水門近くで採取した水の塩分濃度(速報値)などが約9600ppmだったことが報告された。通常濃度は100ppm程度という。
県杵島農業振興センターは、海水が流れ込んだとみられる農地の表面から5、10センチの深さで土壌を採取し、濃度を調べる。結果を受けて町などは消石灰や石こうを混ぜて除塩効果を高める。

水路沿いで巨峰を育てている農家の男性(77)は「栽培には水が欠かせない。塩害を避けるため、水路の水は使わず、水道の水を大型のタンクに移してまいている。作業量が増えて大変だ」と話していた。

武雄河川事務所長は農家への説明会で謝罪した。
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