「キスマーク+100円」 使用済みマスクの売買は法に触れないのか
社会
新型コロナウイルスの感染拡大でマスクの着用が日常化するなか、口紅や唾液などがついた使用済みマスクがインターネット上でひそかに売買されている。誰が売り、どんな人が買っているのか。違法性はないのか。マスクを売っていた女性と女子中学生に聞いた。
「使用済みマスク1枚600円 口紅でキスマーク+100円」「3日着用マスクセットです!」――。最近、ツイッターではこうした書き込みが急増している。口紅や唾液の跡を強調するマスクの写真がアップされているケースも多い。
東京都内に住む会社員の30代女性は2021年夏、ツイッターで使用済みマスクを売る投稿を見つけた。以前からフリーマーケットアプリで使わなくなった洋服やアクセサリーを売っていたため、「その延長のような感覚」で自身も売り始めた。「捨てるか、人に売るかの2択なので、あまり抵抗はなかった」
初めてマスクを売ったのは21年8月のことだ。仕事やジムで「一日中」着用して汗や化粧がついたマスクを写真付きで投稿した。年齢は20代と偽った。実際に売れるか半信半疑だったが、「気になっています♡」などと1日もたたないうちに会社員やアルバイトなどとみられる10人弱から連絡が来た。
販売方法などのやり取りを重ね、1枚500円で月に4枚ほど売った。今は定期的に買う人がおり、月3000円程度の売り上げがある。
一方、マスクを売り始めると「使用済みの下着やタイツも売ってほしい」という依頼も相次いだ。そのため、下着は1500円前後、タイツは400~500円程度で売っているという。マスクと合わせ、これまでに約2万円を稼いでいる。
この女性はツイッター上で顔を明かしていない。「直接会いたい」と言われたこともあるが、断っている。「誰が買うか、バーカ」といった暴言が送られてきたこともあったが「実際に会ったり、連絡先を教えたりするわけではないので、危険な思いをしたことはない」と危機感は薄い。
使用済みマスクの写真と共に購入を呼び掛ける投稿=ツイッターより(画像の一部を加工しています) 拡大
使用済みマスクの写真と共に購入を呼び掛ける投稿=ツイッターより(画像の一部を加工しています)
ただ、最近の売れ行きは芳しくないという。「『同業者』が増えてあまり売れなくなってきた。値段を安くしたり、キスマークをつけたりして付加価値をつけている」と明かす。
この女性が販売に利用しているのはフリマアプリ「メルカリ」だ。同アプリでは開封済みの衛生商品の販売を禁止しているため、女性はツイッター上で値段交渉をした後、アプリでTシャツなどのダミー商品を出品するなどして取引しているという。
メルカリは毎日新聞の取材に「違反行為が確認され次第、商品削除やお客様への警告、本人確認の要請などで対応している」と説明したが、「ダミー商品」の存在については「商品を偽造した取引についても禁止している」との回答にとどまった。
「漫画買うお金欲しくて」中学生も
使用済みマスクを売っている中学生もいる。
中学3年の女子生徒は友人がやっていたことがきっかけで、今年2月から「JC(女子中学生)のマスク売ります」などとツイッターに投稿するようになった。
これまでマスク15枚が1500円で売れたこともある。連絡してきた人からの依頼で、自身の舌を写した画像などを送信し、現金を受け取ったこともあった。
使用済みの下着を売ったこともあるが、裸の写真を送ったり直接会ったりはしていない。女子生徒は「本当はやりたくないけど、バイトもできないので、漫画を買うお金が欲しくてやっている。高校生になったらやめようと思う」と話した。
https://mainichi.jp/articles/20220502/k00/00m/040/231000c
https://i.imgur.com/JkaIEWR.jpg