北海道・知床半島沖で観光船「KAZU I(カズワン)」(乗客乗員26人)が沈没した事故で、運航会社「知床遊覧船」が届け出ていた安全管理規程は、乗客の家族に配布した説明文書とは異なっていた。実際は運航管理補助者を定めておらず、桂田精一社長(58)が事故後に開いた記者会見の説明とも食い違っている。国土交通省は特別監査で同社の運営実態を調べている。

知床観光船、昨秋の無線記録に空欄複数…「定点連絡」不備
 「北海道運輸局に提出済み当社の届け出内容を確認したところ――」

 桂田社長が乗客の家族向けの説明会で配布した「説明内容の訂正とお 詫わ びについて」と題する文書は、それまでに説明した内容を改めて確認し、訂正するような体裁で記されている。

 4月27日の記者会見での「運航管理者は船長」とする説明については、自身が運航管理者だったと認め、「自覚が足りませんでした」と謝罪した。

 一方、運航管理補助者については「(事故)当日は、営業所内に運航管理補助者として登録している社員はいなかった」とし、一時的な不在のように記述。文書の一つとして配布した「非常連絡表」にも、運航管理補助者として豊田徳幸船長(54)と、別の一人の名前を記載していた。

 しかし、国交省関係者によると、国に届け出された安全管理規程では、運航管理補助者の欄は空欄で、そもそも選任していなかった。

 同社の安全管理規程は昨年7月30日に改定されており、国交省関係者は「家族に配布した文書は、古い資料や作りかけのものなどとみられるが、明確には分からない。故意に偽る理由は考えにくいが、それにしても不可解すぎる対応だ」と、ずさんな対応にあきれた。

 桂田社長は、法令の理解不足とみられる説明を繰り返してきた。

 4月27日の記者会見では、出航中止基準の波の高さや風速、船と事務所との連絡方法について、「安全管理規程には具体的には書いていない」などと説明したが、これは法令上、記載すべき事項に含まれており、実際には明記されていた。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220505-OYT1T50212/
https://i.imgur.com/dMgjHMK.jpg