カナダで行われた意識調査により、キリスト教やイスラム教などの宗教は「社会にとって有益であるよりもむしろ有害である」と考えるカナダ人が多いことが判明しました。

Canada across the religious spectrum: A portrait of the nation’s inter-faith perspectives during Holy Week - Angus Reid Institute
https://angusreid.org/canada-religion-interfaith-holy-week/

Canadians consider certain religions damaging to society: survey - National | Globalnews.ca
https://globalnews.ca/news/8759564/canada-religion-society-perceptions/

カナダ統計局は2021年に、「15歳以上のカナダ人のうち、何らかの宗教に所属していると答えた人は68%しかいない」との調査結果を発表しました。カナダで宗教に帰属する人が70%を下回ったのは、1985年に統計が始まって以来初めてのことです。

こうした世相を受けて、世論調査を行うカナダの非営利団体・Angus Reid Instituteは、特定の宗教に関するカナダ人の意識調査を実施しました。


調査は、Angus Reid Instituteが主催するアンケートサイトのAngus Reid Forumの会員を対象に、2回に分けて実施されました。1回目の調査は2022年1月21日から2月3日にかけて行われ、キリスト教以外の宗教としては規模が大きいイスラム教、シク教、ヒンドゥー教、ユダヤ教の信者であるカナダ人1290人が対象となりました。また、2回目の調査は4月5日から7日にかけて行われ、宗教を問わないカナダ人全体のサンプルとして1708人を対象に行われました。2回目の調査対象者の中には、キリスト教の福音派プロテスタントの信者100人が含まれていたとのこと。

この調査の結果、福音派プロテスタントのキリスト教とイスラム教の2つが「社会にとって有益というよりも有害である」と考えるカナダ人が多いことが判明しました。特に、宗教を信じていない無神論者の人は、キリスト教に対して非常に批判的だった一方で、シク教やヒンドゥー教には比較的寛容だったとのこと。また、カナダで最大の宗教であるローマ・カトリックの信者は、「福音派プロテスタントのキリスト教、イスラム教、シク教は利益より害の方が大きい」と考える傾向がありましたが、それ以外の宗教に対しては肯定的でした。


また宗教に着目すると、福音派プロテスタントのキリスト教はあらゆる立場の人から否定的に見られている唯一の宗教でした。この宗派の人はカナダの人口の約7%を占めており、減少傾向にあります。

カナダ福音連盟でリサーチディレクターを務めるRick Hiemstra氏は、「Netflixの番組などでは、信仰にあつい宗教家はよく逸脱者として描かれます」と述べて、宗教に熱心なことがマイナスイメージにつながっているのではと分析しました。

また、イスラム教が有害とされた点について、カナダ・ムスリム協会の元広報担当者であるRania Lawendy氏は、「カナダでは依然としてイスラム恐怖症がまん延しており、ムスリムが『自分たちの宗教がカナダの普遍的価値観とは相容れない』と感じさせられているのが原因です」とコメントしました。