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【知床観光船事故】水深120mの海底「飽和潜水」で捜索、深い海への潜水を可能にする特殊技術

沈没した観光船「KAZU 1(カズワン)」の状況を調べるため、月内にも始まる「飽和潜水」は、深い海への潜水を可能にする特殊な技術だ。潜水士が専用設備で時間をかけて体を慣らした後、海中に向かうことで、より長時間の作業に耐えられる。

カズワンが沈んでいるのは、水深約120メートルの海底。引き揚げるには船体にワイヤを引っかけ、クレーン付きの台船でつり上げる必要があるが、あらかじめ船体の向きや損傷具合、周囲の地形をよく調べないと、作業の途中で壊れる恐れがある。海上保安庁の特殊救難隊でも潜れるのは水深60メートル程度にとどまるため、同庁は飽和潜水の技術を持つ民間業者と契約した。

潜水士は船内の気圧を調整できる特殊な部屋で、ヘリウムや酸素の混合ガスを吸うことで、1日程度かけて、潜る深度と同じくらいの圧力に体を適応させる。専用のカプセルに入って海底に向かい、作業後は部屋で徐々に地上の気圧に体を慣れさせることで、深い海から突然地上へ戻った際の急激な気圧の変化で生じる「潜水病」などを防げる。