ロシア外務省は4日、岸田文雄首相らの入国禁止を発表しました。日ロ平和条約交渉の中断も通告しています。ロシアの論理とは何か。最近、「外交証言録 高度成長期からポスト冷戦期の外交・安全保障」(岩波書店)を発表した竹内行夫元外務事務次官は、プーチン大統領の大国主義と陰謀に基づく思考が背景にあると指摘します。プーチン氏の戦略を見抜けなかった日本外交にも苦言を呈しました。

 ――現役の外交官時代、ロシアの外交をどう眺めていましたか。

 ロシアは冷戦で敗北したにもかかわらず「自分たちは大国だ」という意識が抜けなかったのです。迷惑なことです。大国の条件は経済力、軍事力、外交・政治力などです。そのうちロシアには軍事力しかありません。経済規模は韓国並みで、ロシアと同盟関係を進んで結びたいと考える国もありません。

 それでも、ロシアは国際社会における自国の位置を客観視できません。大国意識とともに「自分たちは侵略されるかもしれない」という被害妄想も持っています。北方領土交渉でも、ロシアの外交官や専門家らは打ち解けると「北方領土を返還すると、欧州で国境線を変更しようとする動きが出てくる」と真顔で話していました。

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