ポルノは、現在インターネットを通じ、スマホなどから非常に簡単に見られるようになっている。その気軽さゆえか、周囲に人がいる電車や図書館などでポルノを見て、その姿を周囲に見られる人がいる。なぜそんな行為を人は取ってしまうのだろうか。

背景には依存や常態化などの問題

メディア監視団体Ofcomの報告によると、イギリスの成人の半数がポルノを見ているそうだ。それを公共の場で見るのは、このごく一部に過ぎないが、「恥ずかしいもの」とされるポルノを、なぜ周囲に他人がいる前で見てしまうのだろうか。

英ローレルセンターの創設者で、セックスとポルノ中毒を専門とし、数々の患者を救ってきた心理療法士のポーラ・ホール博士によると、こういう行動を取る理由のひとつとして、「ポルノ依存症」が考えられるという。人は何かの中毒になると、衝動を抑えられなくなる。理性よりも欲求が大きくなり、脳の思考部分が止まってしまうそうだ。

また、ホール博士によると、人前で見てしまう人には「自己認識の欠如」があるという。ポルノは以前より広く普及しており、スマートフォンから簡単にアクセスできてしまうため、ポルノ自体が常態化して、それが恥ずかしいものという認識がなくなってしまっているのだ。

低年齢からポルノを見ていた場合、その習慣がより常態化しており、意識も欠如している可能性が高い。

彼らは、それゆえにポルノを見ている自分の姿を見た他の人が、どれだけ不快に思うかを想像できないのだという。

さらに、ごく一部の男性においては、ある種「権力」を示そうと公共の場でポルノを見ていると指摘する。彼らはやや女性差別的で、自分には好きに見る権利があり、それで周囲が不快に感じても自分には責任がないと考えるのだという。

周囲にポルノを見ている人がいたらどう行動すべきか

しかし、実際電車やバスで隣に座った人がポルノを見ていたら、不快感を覚える人は少なくないだろう。そのようなときはどう対処すればいいのか。

英メディア「BBC」によると、ポルノに関する法律を専門とする、ダラム大学のクレア・マクグリン教授は、法律上公共の場でポルノを見るのを止めることはできないと述べる。

「自由に利用できる合法的なものを見ているのですから、その利用を制限すると別の問題が生じます」

マクグリン教授は、法律が止められるのは、ポルノを見ている人が誰かに嫌がらせをするなど、明らかな迷惑を引き起こした場合のみだけだと考えている。

一方、ロンドン交通局は、近くの乗客がポルノを見ているなどして不快な思いをさせられた場合は、警察か運転手などのスタッフに伝えるよう言っている。スタッフからの連絡を通じて警察がやってくることになっているそうだ。

しかしマクグリン教授は、警察に何かをやれる権限はあまりないという。また、電車やバスには乗務員もおらず、乗客はいつでも降りられるので、実際に警察が取り締まるのも容易ではない。

一方、アメリカでは、民間の団体のキャンペーンによって、ほぼすべての航空会社が、フライト中の乗客のポルノ視聴を禁止するルールを設け、客室乗務員への教育を強化したそうだ。もし公共の場でのポルノ視聴を止めるには、個別のルール整備に期待するしかないようだ。


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