銃撃されたアルジャジーラ記者の葬儀、イスラエル警官隊が参列者と衝突
https://www.bbc.com/japanese/61447065

パレスチナ自治区でイスラエル治安部隊による作戦を取材中に銃撃され死亡した記者の葬儀が13日、東エルサレムで執り行われた。
中東の衛星放送局アルジャジーラのシェリーン・アブ・アクラ記者(51)の棺を運ぶ葬列では、イスラエルの警官隊と参列者が衝突し、
もみ合いの中で棺が揺さぶられ、地面に落ちそうになった。

聖ジョセフ病院の敷地内でアブ・アクラ記者の棺を担ぐ参列者たちと、警棒などを手にした警官隊が押し合い、記者の棺が地面に落ちそうになった。

現場の映像からは、警棒などを手にしたイスラエル国境警察隊の警官たちが参列者を殴ったり蹴ったりする様子が確認できる。
イスラエル警察は、警官隊が投石されたため、「暴動鎮圧の手段を使わざるを得なかった」のだと説明している。

現場で取材していたBBCのトム・ベイトマン記者によると、
病院の駐車場で待機する霊きゅう車の周りで数百人のパレスチナ人がアブ・アクラ記者の棺を待っていたところ、
病院のゲートがいきなり閉ざされ、重装備のイスラエル国境警察隊がゲートの外に集まった。
馬に乗った警官もいたという。やがて病院の建物内から棺が運び出されると、
イスラエル警察が参列者や報道陣に向かってスタン・グレネード(せん光発音筒)を発射し、参列者や棺を担ぐ人たちを病院の建物の方へ押し返した。

アブ・アクラ氏は11日、ヨルダン川西岸ジェニンの難民キャンプで、イスラエル軍と治安部隊による急襲作戦を取材していた。
パレスチナ保健省などによると、アブ・アクラ氏は「報道」の文字が書かれた青い防弾ジャケットを着てこの作戦を取材中、頭部に実弾を受けた。

アルジャジーラのプロデューサー、アリ・サムーディ氏も撃たれて負傷した。同氏は病院からBBCに、銃撃された当時、近くに銃を持ったパレスチナ人はいなかったと話した。

この時の作戦についてイスラエル軍は、「テロ容疑者」の拘束が目的だったと説明。
「数十人のパレスチナ人がイスラエル兵に向かって発砲し、爆発装置を投げつけた。
兵士たちは応戦のためパレスチナ人たちに発砲し、数人に命中したことが確認されている」とした。

アブ・アクラ氏は、約20年にわたりパレスチナとイスラエルの対立を取材してきた著名な記者だった。
その殺害については、パレスチナ自治政府とアルジャジーラが、イスラエル軍に狙撃されたのだと主張。
一方でイスラエル政府は、事実関係はまだ特定できないとしつつ、パレスチナ側の発砲が原因の可能性もあると反論している。

イスラエル軍は12日に中間調査報告を発表し、「パレスチナ側からの一斉射撃」か、
もしくは「自分の車両に発砲しているテロリスト」に反撃するイスラエル兵士の「数回の発砲」が原因だった可能性を指摘した。

パレスチナの旗がかけられたアブ・アクラ氏の棺は、12日朝にヨルダン川西岸ラマラのパレスチナ自治政府本部に運び込まれた。
車列が通過した通りには大勢の弔問客が並んだ。パレスチナ自治政府本部での葬儀はきわめて異例。

アッバス議長は、アブ・アクラ氏をパレスチナの大義を守るために「命を捧げた」「自由な言葉の殉教者」と呼び、追悼した。
「アブ・アクラ氏の殺害の全責任はイスラエル占領当局にある。
イスラエル側は、この犯罪で真実を隠すことはできない」とも述べ、事件について国際刑事裁判所に提訴する方針を示した。

イスラエルのナフタリ・ベネット首相はこれに対して、アッバス議長が「なんの根拠もなくイスラエルに責任を負わせようとしている」と反論している。