地震の発生直前に起きる「わずかな重力の変化」が、早期の警報につながる可能性:研究結果 2022.05.15

2011年に東日本大震災が起きたときのことだ。
日本の東北地方の沖合いで、海側の太平洋プレートと陸側の北米プレートの境界に当たる海溝でひずみが解放された直後、
わずかな重力の変動が生じたのである。

地球の重力場は、物質がどのように分布しているかで決まる。
つまり、物質密度の高い地域では重力がわずかに強く、物質密度の低い地域では重力がわずかに弱くなっているのだ。

一方で、地震が発生したときのように地面と海水が突然かつ大規模に動くと、物質密度の分布に変化が生じる。
月を地球周回軌道にとどめ、濃い大気を維持し、わたしたちの足を地面に引き下ろしてくれている重力のかかり方が、突然変化するわけだ。

長年にわたって地球のわずかな変動に注意深く耳を傾けてきた地震学者たちは、こうした重力の変動に興味深い可能性を感じてきた。
こうした重力の変動は、光の速度で地球の内部を広がっていく、実質的にタイムラグのない地震のシグナルになるのではないか、という可能性である。

研究者たちはここ数年、大規模な地震が発生した際のデータを精査し、こうした重力の変動の兆候がないか調べてきた。
こうした兆候は簡単に捉えられるものではなく、地震学の世界でもまだかなりの論争が続いている。
しかし、計器の感度やコンピューターモデルの向上により、こうした重力の変動の詳細が明らかになりつつある。

この研究は、過去の1回の地震を事例とした概念実証である。
しかし、その目的は、今後この方法を用いて数秒でも早く地震を検出して素早い地震警報を流せるか確認することだ。
数秒でも早く地震警報を発することができれば、それは貴重な“時間稼ぎ”になる。


https://wired.jp/article/an-elusive-gravity-signal-could-mean-faster-earthquake-warnings/
https://media.wired.jp/photos/627f342d52dd2a554b94f6f4/master/w_2560%2Cc_limit/earthquake_science_GettyImages-1157805673.jpeg