自閉症スペクトラムの責任能力

アスペルガー症候群が初めに大きく取り上げられたのは、2000年(平成12年)の豊川市主婦殺人事件である。「人を殺してみたかった」という供述は社会を震撼させた。

2000年5月1日 豊川市主婦殺人事件[77]
精神鑑定がなされ、1回目の鑑定では「分裂病質人格障害か分裂気質者」と出されたが、「犯行時はアスペルガー症候群が原因の心神耗弱状態であった」と出された2回目の鑑定を認定し、2000年12月26日に名古屋家庭裁判所は医療少年院送付の保護処分が決定した。
2回目の鑑定医師団には児童精神医学の専門医が鑑定団の一人として加わっていた。
アスペルガー症候群は先天性の発達障害であり、知能と言語能力に問題のない自閉症の一種である。
対人関係の構築に困難があるため、二次的な障害として社会生活に対する不適応がみられることがある。
この事件は、文部省(当時)に広い範囲における高機能自閉症児に対する早期の教育支援が必要であることを認識させ、後に特別支援教育として制度化されることになった。
1回目の鑑定を行なった発達障害の知識を有する精神科医はアスペルガー症候群ではないと判定していたため、
別人が行なった2回目の鑑定に対して異議を唱えていた。
2003年7月1日 長崎男児誘拐殺人事件[78]
加害者の補導後、加害者がアスペルガー症候群との診断を受けたことから、西日本新聞は、「加害少年は自閉症」と1面トップで報道した。
これに対し、日本自閉症協会は、「自閉症に対する偏見を助長しかねない」「自閉症と事件に因果関係はない」と抗議声明を発表。
特に全国にあるアスペルガー症候群の子をもつ保護者の会の反発は強く、各報道機関に「アスペルガーという名称を使用しないでほしい」と要望する出来事まで起きた。
一方、アスペルガー症候群への理解を深めるための本が出版されたり、「自分はアスペルガー症候群」と名乗る人が出たりして、社会的な関心が広まったという側面もある。
2011年7月25日 平野区市営住宅殺人事件[79]
大阪地裁は「アスペルガー症候群の影響を考慮すべきでない」「可能な限り刑務所に服役させることで社会秩序維持に役立つ」とし、検察側の求刑懲役16年に対して懲役20年の判決を言い渡した。
これに対し一部の障害者団体は「無理解、偏見に基づく判決だ」と非難している。その後、2013年2月26日に大阪高裁(松尾昭一裁判長)で開かれた控訴審では一審判決を破棄し、懲役14年を言い渡した。
裁判長は「一審は(発達)障害の影響を正当に評価しておらず、不当に重い」と指摘した[80]。
佐世保小6女児同級生殺害事件[81]、宇治学習塾小6女児殺害事件の犯人もアスペルガー症候群を持っていたとされる。

海外の例では、有名なハッカーであるゲイリー・マッキノン[82]、サンディフック小学校銃乱射事件の犯人であるAdam Lanza[83]、
サンタバーバラ乱射事件の犯人であるElliot Rodger[84]などはアスペルガー症候群を持っていたとされる。