③絵画の世界でもバブル崩壊の兆候が現れた。例えば現代アートは、アートの中でも「オークションでついた価格がその作品の価値を決める」という倒錯した市場である。ここで5月9日、現代アートとして最も有名な画家の1人であるアンディ・ウォーホル作の「マリリン・モンロー」が売りに出て、1億9500万ドル(約250億円)で落札された。
これはアメリカ絵画、および現代アートの史上最高額を大きく更新した(これまでは2017年に前澤友作氏が落札したバスキアの作品で1億1000万ドル)。この「事件」を指してメディアは、絵画マーケット、現代アートマーケットは株式市場の混乱を尻目に好調だという解説をしているが、これはまったくの間違いだ。
なぜなら、バスキアのように価格が急上昇をしてきた(前澤氏がさせた)ものとは異なり、ウォーホルのそれは、長年、絵画としての高い評価が確立した最高のものだからだ。
なぜ最高のものを「今」売りに出したのか。売り手はウォーホルのコレクターとして有名な財団であり、売却益は寄付されるという。必要に迫られて売ったわけではない。バブル崩壊の足音を悟ったのだ。
絵画投資家のプロ中のプロも「もはや売り時」と思っているのである。このモンローの本質的な価値は下がらないが、価格が2億ドルか4億ドルかあるいは1億ドルかというのはバブル度合いによる。
実際、オークションを主催したクリスティーズの想定価格は2億ドルだった。通常は、このような二度とマーケットに出てこないようなもの、最高級のものが出てくれば、想定価格の何倍もの値段で決まるものである。
実際、これまでの主要アート中での最高落札額は、レオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」で、2017年に4億5000万ドルだが、クリスティーズの想定価格は1億ドルだった。つまり、相場は崩れ始めた可能性がある。
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