アマビエではなくヨナタマだな

>昔、伊良部島の下地村に住む男が、人面魚体の「ヨナタマ」という魚を釣った。
>漁師はあまりに珍しいものだから、翌日みんなに見せようと思い、魚を炙(あぶ)って乾かしていた。
>その夜遅く、隣の家に母親と泊っていた子どもが大声で泣き出し、「伊良部村へ帰りたい」と泣きながら訴えた。
>すると沖の方から「ヨナタマ、ヨナタマ、どうして帰りが遅いのか」という声がし、隣家に干されていたヨナタマが
>「炭火の上で炙り乾かされているから、迎えをよこせ」と答えるのが聞こえた。
>恐ろしくなった母子は急いで伊良部村に帰ったが、翌朝、下地村へ戻ってみると大津波にのまれて、村は跡形もなくなっていた。

>柳田国男「物言う魚」1932年(『一目小僧その他』収録)