みんな落ち着いてほしい。職場で「ハゲ」と言ってもまだ差し支えはない。

報道では逆のことが言われていたりもするが、イギリスの労働裁判所が5月11日に出した判決は、その言葉を使うことがセクシュアルハラスメントだとはしていない。

だが、法廷の判決は重箱の隅をつつくようなもので、人々を怖がらせてまったく申し分ない言葉から遠ざけてしまうに足るものではあった。それで私の内なる「言葉の錬金術師」が危機感を募らせている。

この裁判を手短に紹介しよう。工場の現場で従業員同士が機械の修理をめぐってひどい口論になり、一方が他方を「ハゲ野郎(bald cxxx、直訳するとハゲた女性器)」と呼んだが、現場監督はぜんぜん対処しなかった。侮辱を被ったその従業員はのちに解雇され、正式な訴訟を起こした。5月11日、その男性は勝訴した。

労働裁判所の裁判官3名は、本稿で伏せ字にするよう編集者から言われたほうの単語、つまり女性器を意味する罵倒表現は無視した。むしろ裁判官らは、「『ハゲ(bald)』という言葉と、性別という保護特性(英平等法に定められた9つの保護特性のひとつ)とのつながり」を見出したのだ。

なぜか? 男性は女性より頭髪を失う可能性がはるかに高いからだという。したがって、この侮辱は「威嚇的等の環境を作り出し」、また「その目的のためになされた」というのだ。

ということで、この判決は限られたものであり、「ハゲ」という言葉が(1)男性に向けられ、かつ(2)威嚇する目的で発せられる言い争いの文脈のみに適用される。

だが、たとえ威嚇があったにせよ、「ハゲ」が威嚇の源だったとは想像しがたい。その理由を説明するには、ちょっとした言葉の錬金術が役に立つだろう。

https://news.yahoo.co.jp/articles/cf7278335a0c781646de3925231a1c381abdae3c