売春防止法から女性への差別的な条文を削除し、貧困や性暴力の当事者らへの公的支援も明記した新法「困難女性支援法案」が18日、衆院厚生労働委員会で採決される。
全会一致で可決された後、19日の衆院本会議でも可決、成立する見通し。売防法に基づく自治体の差別的な対応に傷つけられた女性からは「理不尽な対応を改めてほしい」と歓迎の声が上がる。
支援団体は「実際に支援を担う自治体の意識改革こそが大事だ」と指摘する。
「ここまで傷ついても助けてもらえないのか」。東京都内に住む女性(26)は、2017年にわらにもすがる思いで頼った自治体への失望をこう振り返る。
女性は当時、同居していた男性から暴力や暴言を繰り返し受けていた。預金通帳は取り上げられ、友人との交流も禁止。
若い女性が殺害されたニュースを見た男性に「おまえもこうなるかもな」と脅された。半年間ほど耐えたが、命の危険を感じ、若年女性の保護や支援を担う都内のNPO法人「BONDプロジェクト」に駆け込んだ。
女性には頼れる家族がなく、都道府県が売防法に基づいて設置する「婦人相談所」の一時保護所に身を寄せた。だが、部屋は共用で薄い布の間仕切りがあるだけ。携帯電話の使用や1時間を超える外出は禁止で、集団生活を乱したとみなされると、職員から叱責された。
「これ以上は耐えられない」。10日後に施設を抜け出し、BONDに戻った。
威圧的な対応を受けたのは、売防法で、一時保護所が売春をする恐れがある女性らを受け入れ対象とし、「更生」や「指導」を行うと規定されているからだ。
実際には、売春と関係がない暴力の被害者らの受け皿にもなっているが、職員に支援対象という意識が行き届いていないとされ、「かえって当事者を追い詰めている」と批判されてきた。
女性は「今回の法案の成立を機に、助けを求める人に寄り添った支援が広がってほしい」と語った。
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