「万引きGメン」と呼ばれる私服保安員の30代男性宅に、心当たりのない不審な郵送物が届くようになったのは約2年半前の冬だ。
履き古した靴下やごみ袋、紙くず……。送り付けたのは、男性が万引きを見つけて警察に引き渡した人物だった。
「捕まったことへの報復」と供述したが、名前も知らない保安員の住所をなぜ知っていたのか。
男性の刑事裁判を取材していくと、「情報源」の正体に背筋が凍った。
嫌がらせは2019年12月から突然始まった。
使用済みの靴下やスリッパ、ごみ袋が詰められた段ボール箱が、大阪市内で暮らす保安員の自宅に着払いで届いた。
汚物の郵送は約3カ月間で計5回に上り、風呂の残り湯を入れた大きな容器が収められていたこともあった。
保安員は身に覚えがなく、「悪質ないたずら」と考えて警察に相談した。
21年2月、大阪府警が府迷惑防止条例違反の疑いで逮捕したのは東京都青梅市に住む無職の男性(36)だった。
男性は府警の取り調べに動機をこう語った。「過去に万引きで取り押さえられた時、首を絞められた。ずっと恨んでいた」
万引き事件の発生は18年の春までさかのぼる。JR天王寺駅(大阪市天王寺区)近くの繁華街にある商業ビル。
男性はビルのテナントに入るドラッグストアで、健康食品など約20点(約4万円相当)をかばんに詰め込んでいた。
この窃盗を見逃さなかったのが、万引きGメンとして店内を警戒していた保安員。
店から逃げようとした男性を取り押さえ、駆け付けた警察官に引き渡した。
男性は窃盗容疑で現行犯逮捕され、その後に実刑判決を受けて服役した。
府警の捜査で、男性は刑務所を出所したわずか11日後に保安員宅に最初の郵送物を送り付けたことも明らかになった。
男性は「服役中から仕返しを考えていた」とも供述し、出所後間もなく計画実行に向けた準備に着手したとされる。
https://mainichi.jp/articles/20220517/k00/00m/040/229000c