山形・舟形町が「縄文の女神」のレプリカに交付金 町民「誰が見に行くかわかんねえ」「違うことに使って」
https://tansajp.org/investigativejournal/9042/

町のあちこちに縄文の女神
山形県北部の内陸にある舟形町には、約5000人が暮らす。65歳以上の人口は42%に上り、町の全域が過疎地域になっている。

私は今年1月末、舟形町に向かった。東京駅から山形新幹線で3時間40分かけて新庄駅へ。新庄駅からはレンタカーを使い、30分ほどで町に入った。

舟形町は県内でも有数の豪雪地帯だ。当日は数メートル先も見通せなくなるほどの吹雪で、電信柱の3分の1ほどは雪に埋もれていた。

町内に大きな量販店や職場はない。町の人たちは、仕事や買い物は車で数十分の新庄市や尾花沢市に出るという。

町の名物は、東西に流れる小国川(おぐにがわ)で釣れる若鮎だ。毎年7月から10月の鮎釣りシーズンになると、観光客が集まる。9月の若鮎祭りにはコロナ以前では約3万人が参加した。町の高台にはコテージスタイルの温泉施設があり、テニスコートや野球場も備えている。取材で訪れた日はコテージが雪で埋もれていたが、施設の目印である真っ直ぐ上を向いた鮎のモニュメントが見えた。

もう一つ、町のあちこちで目にするのが「縄文の女神」だ。

1992年、町内の道路建設中に出土した縄文時代中期の土偶である。高さ45センチで女性の形をデフォルメしており、2012年には国宝に指定された。以来、舟形町は「縄文の女神の里」と打ち出している。

駅や役場、公民館など町のあらゆる場所で、大小さまざまな縄文の女神のレプリカを見つけた。取材中に目にしただけでも、発掘現場の「西ノ前遺跡」に1体、公民館に10体、舟形駅前の観光物産センターに2体あった。他にも休館中の舟形歴史民俗資料館にもレプリカがあるといい、その数は町教育委員会の職員でさえ把握できていないほどだ。

ところが町は、地方創生臨時交付金を使い、さらに2体のレプリカを製作した。一体なぜだろうか。私は役場に向かった。


大阪の業者に製作を依頼

役場にも、玄関にガラスケース入りの小さな縄文の女神のレプリカが置かれていた。

まちづくり課で名刺を渡すと、曽根田健課長が詳しい話を聞かせてくれた。

町が製作したのは、実際に出土した縄文の女神と形、重さ、色合いがほとんど同じの陶製の精巧なレプリカだ。2021年11月に、669万9000円で2体を製作。そのうち交付金で充当したのは649万円だ。現在は1体が町の公民館に保管され、もう1体は町長室に飾られている。

製作は、芸術作品や文化財の複製などを手がける、大阪府の業者に依頼した。町が提供した三次元計測データに基づき、表面の凹凸を再現。細かな色合いや質感は職人の手作業だ。

最大の特徴は、直接触れられることだ。ガラスケースの両側に空いた穴から手をいれ、質感を確かめたり持ち上げたりすることができる。

曽根田課長は、「子どもたちや地域の方が本物に近いレプリカに触れることで、地元への愛着や誇りの形成につなげてほしい」と話す。レプリカを製作するアイデアは、教育委員会からの提案だったという。

だが、レプリカは町内にたくさんある。これ以上必要なのだろうか。