◆「稼げてる当事者」と「稼げていない当事者」とでは、見えてる世界がまったく違う◆
AVも同じです。
自分の価値(もっともこれは、AV業界の価値基準に過ぎません)が露骨にギャラに反映します。
1本で300万もらえる単体女優がいて、同じ内容の仕事をしても20万しかもらえない企画単体女優がいて、目先の2万円、5万円のために脱ぐ女性も大勢います。

そして、「稼げてる当事者」であっても、新作を出し続けない限り収入は安定しませんし、デビュー作以降は次第に過激な内容を要求されるようになります。
あるいは整形してもっと商品価値を高めるように煽られます。直接煽られなくても、そうしたプレッシャーと常に隣り合わせの世界です。
このエスカレーターにいつのまにか乗せられてしまうと、自力で降りることはとても難しくなります。乗ってることに気付かないまま乗せられてしまうからです。

先日、ある「稼げてる当事者」が「自分はスタッフにとても大切にされている」という話を披露して、そこには大量の”いいね”がついていました。
これは単に売れてる立場だから「大事にされてる」だけなのです。「稼げてる当事者」は「稼げていない当事者」が同じ時間に別の現場でどんな虐待を受けているか知らずに済んでいるのです。
何度も何度も浣腸され、排泄シーンを様々なアングルで撮影され、恥辱にまみれた姿態を晒すことでやっと数万円の稼ぎを手にする女性もいるのです。

◆被害者がいるのに「中立スタンス」はありえない◆
非当事者の中には、「やりたくてやってる当事者」と「不本意な当事者」を二分して、それぞれの意見を聴いて対等に扱うことが中立だと信じてる人が多くいます。
ですが、旬の女優の話に耳を傾けただけで何かを理解した気にならないでください。

「被害者の話」をしてると、必ずと言っていいほど「無事な人」の話をしてくる人がいますが、そうやってマイクを奪い続けることが二次加害なのだといい加減気付いてほしいです。
(もしあなたが何かの被害者で、metooの流れで被害を告発してるときに、突然「私は無事だったけど?」と主張する人が現れて、
あなたがやっとのことで絞り上げた声が遮られたらどんな気持ちになるでしょうか)
優位にいる当事者を持ち上げれば持ち上げるほど、虐げられてる劣位にいる当事者は声を上げられなくなります。
「稼げてる当事者」を応援することは「稼げていない当事者」の苦痛を黙殺することと同義なのです。

また、引退者の中にも、「風俗があってよかった」と自分の過去を肯定的に評価する人がいます。
そうした感想が出てくること自体を否定する気はありませんが、性産業の世界で加齢する前に自力で脱出して人生を再建できた当事者による生存者バイアスにまみれた言葉に対し、
「待ってました!」とばかりに、しきりに「いいね」を送り賞賛する非当事者に言いたいです。
生存者バイアスは、文字通り生存者にしか口にすることができないのです。
どうか、生き残れなかった人に想像力を馳せてください。
どうか、被害者の声に耳を傾けてください。

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