◆容赦のないウルトラマン!

『シン・ウルトラマン』の登場人物のなかで、筆者が他人とは思えなかったのが、禍特隊の非粒子物理学者・滝明久(たき あきひさ)だ。
ウルトラマンがネロンガの放電を受けても平然としているのを見て「50万kWはあるのに!」と驚き、スペシウム光線が周囲の山ごとネロンガを爆破すると「いったい何GJ(ギガジュール)あるんだ!?」と疑問を口にする。
いちいち数字にするのが、まるで自分を見ているようだ。
その彼が口にした、ネロンガの放電「50万kW」とは、いかなる威力なのか?
大型原子炉の出力が150万kWだから、その3分の1。しかも劇中の印象では、ウルトラマンは放電を30秒ほども浴びていた。
[kW]とは「1秒に発生するエネルギー」=「仕事率」の単位で、秒数をかければエネルギーになる。50万kW×30秒=1500万kJ=1万5千MJ(メガジュール)=15 GJ。
つまりネロンガの放電は、15GJ。雷10発にも匹敵するようなすごいエネルギーである。
では、スペシウム光線の威力はどれほどか?
劇中、ウルトラマンはかなり離れたところからスペシウム光線を放ち、射線上の山をボカンボカンと吹き飛ばしていた。まことにカッコよかった。
映画の描写から、山の高さが180mほど(=身長の3倍と仮定)で、吹き飛ばされた距離が600m、幅が60m……だったとしよう。
それだけの現象を起こすエネルギーを計算してみると、なんと9600GJである。
前述したネロンガの放電15GJの640倍! 1発殴ってきた相手に、640発殴り返すようなものだ。このヒーロー、容赦というものがまるでない!


これについては、地球に来たばかりで、加減というものがわからなかったとも思えるし、劇中の「禍威獣」の設定を考えれば、容赦している場合ではなかった、とも考えられる。
このあたりも、さまざまな見方ができて、『シン・ウルトラマン』はまことに面白い。
そして、登場人物がしばしば『空想科学読本』みたいな数字を口にするので、筆者は「それを劇中の人々が言ったら、もうワタクシの出番がなくなります~」とドキドキしながら見ていたのだが、それも含めてこの作品の魅力に他ならない。
――最初の放送から56年経って、ウルトラマンはここまで来たのだ。しみじみ嬉しい。

『シン・ウルトラマン』考察。1発殴られたら640倍返し!? 容赦ないスペシウム光線の威力にびっくり!
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagitarikao/20220524-00297420