アラブ首長国連邦(UAE)では、夏の最高気温は40度を超え、日によっては50度を超える。降水量は年間を通じて少なく、国土のほぼ全域に砂漠が広がっている。しかし冬は、最高気温は25度以下で、水の確保さえできれば農業生産に適した環境になる。
冬にはスーパーマーケットの店頭にさまざまな自国産の農産物が並ぶなど、農業が意外に盛んであることに気が付く。UAE気候変動・環境省の統計によると、キュウリの約9割、トマトの約4割を自国産で賄っているという。本レポートでは、UAEの果樹・野菜生産の状況について紹介する。
UAE連邦競争力・統計局によると、UAEの人口は977万人(2019年)、GDPは4,172億1,600万ドル(2019年)。主な産業は鉱業で、GDP全体の23%を占める。次に卸売・小売業が13%、建設業が9%と続く。農林水産業は31億1,700万ドルで、全体の0.7%程度となっている。0.7%の内訳は公表されていないが、農業が大きな割合を占めていると思われる。
ドバイやアブダビの都市部から少し離れると、同国の主要農産物であるデーツの栽培農場やラクダの肥育施設が目に入り、農業が地方都市経済を支える基盤産業であることがうかがえる。
国は地域の農作物を安定的に生産するため、国営の農業試験場を設置し、病害虫防除技術の指導や、近年深刻化している塩害などについて研究・普及指導を行っている。また、農薬の購入、農業機械の購入などに対しても補助金制度が設けられている。
UAEの果実・野菜生産にとって避けられない課題は、水の供給と高温対策である。果樹・野菜の主な生産地はオアシス地域に位置しており、地下水を水源として点滴灌漑(注)で生産されている。ただし近年では、地下水の塩分濃度が高くなっており、生産を断念する農場も出てきている。
高温対策も重要な課題であり、試験場でさまざまな対策が研究されている。その他に、市場が高品質な商品を求める動きもあり、選果技術などの課題も聞かれる。
UAEの農業関係者の間では、日本の生産技術は優れているとの認識があり、日本からの農業技術支援を望む声も聞かれている。
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/24c246d50384174a.html
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