ロシアのウクライナ侵攻を背景に輸入小麦の価格が高騰する中、国産米粉への注目が熊本県内でも高まっている。
パンや麺類に用途が広がり、アレルギーの要因となるグルテンを含まない特性もあって米粉の需要は年々増加。小麦高騰を受けてさらに加速する可能性がある。

熊本市と嘉島町に3店舗を展開する「まどパン」(熊本市東区)は、米粉を使った商品を増やすことを検討している。
現在はいずれも国産の米粉と小麦粉を8対2の割合で配合した「お米パン」と、同じパンを使ったサンドイッチを販売。今後、米粉の食パンや菓子パンの試作に取り組むという。

 お米パンは年間を通して売れる定番商品で、「もちもちとした食感でほんのり甘く、冷めても硬くなりにくい」と人気が高い。
米粉の価格が小麦粉より高いことがネックだったが、専務の後藤裕子さん(49)は「小麦粉の値上げで価格差がどんどん縮んでいる。
米粉パンは焼き方や材料の配合に工夫が必要だが、チャレンジする価値はある」と言う。

農林水産省の統計によると、2021年度の米粉用米の需要量は4万1千トンと14年度の約2倍に増えた。
米粉用の品種開発や製粉技術の向上で、和菓子中心だった用途がパンやケーキ、麺類に拡大。
グルテンアレルギーのある人でも食べられることや、油の吸収率が低く揚げ衣に使うとカロリーを抑えられる点も、消費者のニーズに合致した。

農水省の21年度調査では、業務用の販売価格は小麦粉の1キロ110円に対し、米粉は同120〜390円と幅がある。
しかし、国が半年ごとに見直す輸入小麦の政府売り渡し価格は昨年10月に19・0%アップ、今年4月にはさらに17・3%上昇しており、米粉との価格差は縮小している。
政府は物価高騰の緊急対策に、米粉を使った商品開発に取り組む事業者への支援事業を盛り込んでおり、追い風は続きそうだ。

国産米粉を製造販売する熊本製粉(熊本市西区)には4月以降、県内外のパンや菓子メーカーなどから、米粉の特性や小麦粉との違いに関する問い合わせが相次いでいる。
「米粉販売はもともと堅調だったが、小麦高騰のニュースで興味を持つメーカーが増えたようだ」と担当者。
現時点では増産などの動きはないが、「商品サンプルが欲しいという依頼も増えており、これを機に認知度を高めたい」と情報発信に力を入れる。

米粉以外のコメ加工品を扱う県内企業も攻勢をかける。玄米ペーストを使ったパンやパスタを製造販売する熊本玄米研究所(菊陽町)は4月末、新たに「玄米ラーメン」を発売した。

同社の店舗「玄氣[げんき]堂」(大津町)の売り上げは、14年の開業時から倍増した。広報担当者は「栄養価の高さや健康志向を背景に、玄米への関心は年々高まっている。
小麦粉の代替品としてだけではなく、玄米特有の魅力をアピールしたい」と話す。

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